<PROFILE>
学習塾運営を経て森上教育研究所を設立。中学受験塾や私立中高一貫校に向け、情報発信やコンサルティング等を行う一方、保護者の悩みに応える「わが子が伸びる親の技(スキル)研究会」を主宰。

小6人口の増加と
新たな入試改革が影響

「今年の中学入試は、二つの点で特殊だったといえます」
 首都圏における2019年度の受験状況について、森上展安さんがこう振り返ります。
「一つは、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で、受験生である小学6年生の人口が増加したこと。子どもの人口が年々減少するなか、今年は企業の都心回帰などで、小6人口が前年比3.5%増でした」
 その人口増も底上げして、受験者数は、前年比で4.3%増という結果に。
「もう一つは、今年の受験生が、大学入試改革で本当に入試が大きく変わる24年度に、大学受験をする学年であるという点です」
 大学入試改革というと、20年度(21年1月)の、センター試験から大学入学共通テストへの切り替わりを想起する人は多いでしょう。しかしそれはまだ改革の入り口の段階。そもそも入試改革は、高校卒業までに思考力や判断力などを身に着けさせることを目的に、学習指導要領の刷新と並行して実施されます。
 共通テストが始まっても、しばらくは従来の学習指導要領で学んだ生徒が受験するため、試験方法や内容などは、センター試験と大きくは変わりません。本格的に変わるのは、24年度からだとみられています。その年度に大学を受験するのが、今春中学を受験した学年というわけです。
「今年の中学受験は、進学校人気が復調しました。それは変革の当事者であるという意識が受験生と保護者の間で働いたからだと考えられます」
 新しい大学入試に備えるために、中高一貫の進学校でしっかり学ぼうという思考の表れだったと、森上さんが分析します。

1都3県の公立小学校卒業者人口が、今年は特異的に3.5%増。私立人気と景気回復を背景に、過去4年受験者数は伸びていますが、今年の伸びの主な要因は人口増。 (出典 森上教育研究所)

進路保証のある
学校に受験生が集まる

 一方、昨年同様、〝入試改革で大学入試がどうなるかわからないから、早い段階で合格を確保しておこう〟という考えから、大学附属校を志望する動きも活発。でも「今年は附属校人気の潮目が変わった」と、森上さんが話します。
「早慶やGMARCHなどの難関大の附属校志望者は、昨年の水準で高止まりし頭打ちの状態です。その分、偏差値的に下の大学の附属校に人気が移り、成蹊や成城の附属校などが受験者を集めました。かつ系属校人気が高まったのも今年の特徴です」
 系属校とは、内部進学はできないけれど優先的に進学ができる学校のこと。準附属校、系列校ということもあります。
「系属校の多くは進学実績も良い。〝行く大学はある〟という進路保証を得て、他の大学も狙えるという魅力が注目されたようです」
 系属校の数も増えていて、16年度に横浜英和学院が青山学院横浜英和に、この春からは浦和ルーテル学院も、青山学院の系属校になりました。日出学園は今春から日大の準付属の目黒日本大学中学になり、倍率を大きく上げたといいます。
「推薦枠が広がる動きもあります。一昨年、麹町学園に新設された、全員が東洋大学に入れる『グローバルコース』もその一例です」
 進路保証を重視するなら、今後も附属・系属校化、推薦枠拡大の動きは要チェックといえそうです。
 このほか、共学化した学校も人気です。神奈川の桐蔭学園はもともと男子と女子が別々に授業を受ける『別学』でしたが、本年度より男女共学に。また、武蔵野大学中学は本年度から、小野学園は来年から女子校から共学化すると発表しています。
「今年は午後入試が増えました。一方で5日に入試を新設した学校もあり、受けられる入試の数が増えたわけです。来年は神奈川・埼玉・千葉の首都圏3県の小学6年生が再び減少に転じることもあり、3県では、全体的に今年より入りやすい学校が増えると思われます」
 そうした学校の併願も含めてスケジュールを組むと、合格しやすくなる可能性があると、森上さんは言います。

入試の多様化が進展
思考力を試す問題に

 入試スタイルについてはどうでしょう? 森上さんによると、英語入試の受験者数が増え、昨年の約1.8倍に。また、プログラミング入試やプレゼンテーション入試のような、教科の学力以外の力を測る入試が増え、受験者も増加したそうです。子どもの個性を生かして私学に入れたいという考えが、ますます広がっているようです。
「入試問題については、算数問題の長文化や、教科融合的な問題の増加が顕著でした」
 SDGs(持続可能な開発目標)のような、社会課題を取り上げる学校も。暗記だけでは解けない問題が増えたため、多くの学校で平均点が下がったそうです。
「どの学校も、大学入試改革で求められる思考力や対応力を見たいわけです。この傾向は今後も続きます」
 では、これから中学受験を迎える家庭でできる対策は?

「多様な問いに対応できるよう、別の解き方がないか、お子さんに尋ねるといいですね。今後の入試では思考のプロセスも大事。答えが間違っていても、プロセスが合っていたら加点されます。〝どうしてこうなったの?〟と尋ねてプロセスを説明させるといいですね」
 思考力のトレーニングでは、都立中高一貫校の適性検査の問題を解く練習もおすすめだそう。さらに、「倍率や偏差値は年度によって変わります。行きたい学校の到達度は、正答率で見るのが一番です」とも。ホームページや説明会で入試問題と正答率を公表している

愛知の学校の入試日前倒し
影響から他県で受験者数減

名古屋経済大学市邨、名古屋経済大学高蔵、名古屋女子大学の入試日程前倒しの影響で、愛知県の延べ受験者数は増加。一方で、昨年度の入試が厳しかった東海は4年ぶりに受験者数減。同じく難化が続いた滝も受験者数を減らした。
※出典:平成30年度 学校基本統計(学校基本調査結果)
※延べ受験者数の年の値は入試年度。海陽中等教育の受験者数は除く。

 愛知県で入試を1月上旬に前倒しする学校が相次いだことから、延べ受験者数は愛知で大幅増。
 多くの学校が1月上旬に入試を行っている岐阜では、その影響で各校とも受験者数が減少し、延べ受験者数も大幅減という結果になりました。
 三重は、英語入試やAO入試の導入などで中学入試が活性化しているものの、岐阜同様に愛知の入試前倒しの影響で、受験者数はやや減少。
 WEB出願が増えたのも今年の特徴。東海地区で8校増加し、昨年の12校から20校に。今後も増加は続きそうです

附属校人気が堅調
新時代教育ニーズが顕著に

減少を続けていた小学6年生児童数が、いったん回復。質の高い中等教育へのニーズの高まりもあって今年度は出願率が増加し、初日午前の志願者数は733人増。ただし児童数は再び減少する見込み。「魅力ある学校づくりの工夫は欠かせません」(萩原さん)

 小6児童数が一時的に回復した今年、関西圏では初日午前の志願者が増加。特に女子校の総出願者数は前年比113.4%で、女子校人気の復活が見られました。
 男子校は、グローバル教育に力を入れる甲南、明星が、それぞれ約130人の志願者数増と健闘。共学校は、依然として高い系列校人気が後押しし、関関同立系列を中心に堅調な人気を示しました。
 今年度も新学習指導要領を見据えた入試が増え、この傾向は今後も強まりそうです。国際バカロレア教育を実践する学校も人気。21世紀型学力に対する注目度の高さがうかがえます。

※各学校のサイトへ移動します。