グループの力を結集して
多様なニーズに応える佐川急便

一人ひとりのセールスドライバーの
情報収集がビジネスを創り出す

ネットで商品を注文し、家まで届けてもらう──。私たちの生活は、物流の支えなしには、もはや成立しない。佐川急便は物流のリーディングカンパニーとして、多様化するニーズにどう応えていくのか。荒木秀夫社長に片桐圭子本誌編集長が聞いた。

文/武田 洋子 写真/増尾 峰明 企画・制作/AERA dot.ADセクション

佐川男子も佐川女子も大人気
世間のイメージも変わったと思う

荒木 秀夫

荒木 秀夫 Hideo Araki

佐川急便代表取締役社長
1956年生まれ。明治学院大学経済学部卒。82年、東京佐川急便株式会社(現 佐川急便株式会社)入社。2000年、本社営業本部部長、02年、同社執行役員、06年、取締役執行役員に就任。SGホールディングス執行役員兼佐川グローバルロジスティクス代表取締役社長などを経て、13年から現職。

片桐 御社とAERAの接点といえば、「佐川男子」です。2011年にテレビ番組で出演者が「佐川萌え」について話しているのを偶然目にしたことが、「夕方6時は『佐川萌え』タイム 決まった時間に来てくれる『定時の王子様』」という記事につながりました。そこから佐川男子が盛り上がっていきましたが、社内では何か変化はありましたか?

荒木 社員のモチベーションは間違いなく上がりました。16年から発売されている「佐川男子」カレンダーに載りたいと思う男性社員は多く、それを目標にしている新卒社員もいるようです。昨年末には「佐川女子」の写真集が小学館から発行されたのですが、こちらは発売当日に完売し、2度、重版がかかりました。世間の業界に対する「きつい」「汚い」といったイメージも変わってきている気がします。

片桐 拘束時間が長い仕事は今、不人気ですよね。我々の仕事も同様です。

荒木 私はセールスドライバー(以下、ドライバー)出身ですが、昔は長く働くことに抵抗はなかった。今は働くことに生きがいや価値観が求められている。「何のために働いているのか」という動機づけを行うようにしています。

時間指定配達の黎明期を
ドライバー時代に経験

片桐 社長に就任されるまでは、どんなお仕事をされてきたのですか。

荒木 26歳で入社し、ドライバーから始めました。本社勤務をはじめ、支社長などを経験し、グループで海外物流を担う佐川グローバルロジスティクス(以下SGL)で海外ロジスティクスなどにも関わりました。

片桐 印象深いお仕事はありますか?

荒木 時間指定がまだ珍しかった頃、荷物の「早配達」という失敗をしたことがあります。新商品発表直後のタイミングで各販売店に届けるはずが、発表前に配ってしまった。そのとき、自分の仕事はただ届けるだけではないのだと痛感しました。

片桐 今も変わらないポリシーのようなものはありますか。

荒木 自分の目で確認するということは、昔も今も変わりませんね。

グループの総合力を活用
専門家集団「GOAL」

片桐 圭子

片桐 圭子 Keiko Katagiri

AERA 編集長

片桐 社長に就任されてから丸6年となりますが、ここまでいかがでしたか。

荒木 おかげさまで順風満帆と言えます。ただ、SGLにいた3年間、外から佐川急便を見ていて、「大きくてすごい会社なのに、なぜもっと強みを生かさないんだろう」と歯がゆく思っていました。グループ各社が個々に成果を上げるだけでなく、互いに協力すれば事業の幅がいっそう広がるのに、と。その思いから14年、佐川急便とSGLの合同で、ロジスティクスの専門家を集めたチーム「GOAL(GO Advanced Logistics)」を立ち上げたのです。

片桐 横断的なプロジェクトですね。

荒木 企業間物流に強みをもつ佐川急便の全国ネットワークと、SGLの流通加工をはじめとする多様なリソース、さらに他のグループ企業がもつ国際・IT・決済機能を加えれば、一貫した物流ソリューションを提供できると考えました。

片桐 発足時のメンバーは何人くらいだったのですか。

荒木 約100人です。5年間で人数は倍、売り上げは5倍程度に増えました。GOALがカバーするビジネス領域は上流から下流、国内外、すべての物流に及んでいます。

片桐 取引先も広がりますね。

荒木 それが未だにラストワンマイル(お客様へ商品を届ける最後の区間)のイメージが強く、我々の事業が広がったことをご存じないお客様が多い。そうした需要を掘り起こすのが、ドライバーです。配送のときにオフィスが移転する話を聞けば、「うちもお手伝いできますよ」と必ず声をかけます。

片桐 ドライバーの皆さんは情報をキャッチする力も必要なんですね!

荒木 その通りです。昔はひたすら量を運ぶのが仕事で男性ドライバーばかりでしたが、今はコミュニケーション力が重要。女性にも大いに活躍の場があるのです。

多様な人が働く会社を目指す
ウィメンズプロジェクト

片桐 私が住んでいるマンションを担当する佐川急便のドライバーさんも女性なんです。いろいろと細やかに気がついて、住人たちとはたいへんいい関係で溶け込んでいらっしゃいます。女性活躍やダイバーシティー推進についてはどのような取り組みをされているんでしょう。

荒木 栗和田榮一会長(佐川急便を傘下にもつSGホールディングス会長)が旗振り役になり、女性従業員の活躍を推進するため、11年からグループ横断で、女性活躍推進に向けた「わくわくウィメンズプロジェクト」を展開しています。女性が働きやすい会社というのは、男性にとっても働きやすい。結果として多様な人が働くダイバーシティーの実現につながると考えます。最初はとにかく女性が少なかったので、職場環境の整備が課題でした。それから定着率のアップ、働きやすさのための制度充実、女性管理職の増加など、年ごとにプロジェクトの目標ステージは上がっています。当社に関しては現在、係長以上の管理職に占める女性の割合が1割近くあります。

片桐 発言する女性の数が増えたことで事業に何か変化はありました?

荒木 これまで気づかなかったことがいくつも事業化されました。毎年、社内で女性活躍を後押しする取り組みを表彰するアワードがあるんですが、受賞事業の中に茨城県の潮来営業所が始めた集配システムがあります。これは働く人一人ひとりのライフスタイルに適した集配構造を考えたもので、まず配送車をトラックから運転しやすい軽自動車に切り替え、さらに複数人が同一エリアを時間別に担当することで短時間労働を可能にしたんです。これで雇用の拡大や労働環境の改善を実現しました。また、女性チームが運営する観光拠点のサービスセンターも受賞事業ですが、「対応がいい」「安心感がある」と好評です。この事業はもともと千代田営業所の一人の女性社員が「やりたい」と始めたものなんですが、今や全国15カ所に展開しています。

片桐 現場のアイデアを吸い上げてビジネスにする仕組みが機能しているということですね。

荒木 これまで「わくわく〜」を進めてきて、行き着く先は風土改革であることがよくわかりました。意識の浸透にはもう少し時間が必要です。社員のみなさんの意見を潰すことのないよう、さらに取り組みを加速させていく予定です。

会社への理解深まるような
テレビコマーシャル

片桐 年末にテレビCMを拝見しました。結婚に反対し披露宴を欠席した和菓子職人の父親から、和菓子でつくったウェディングケーキが式場に届けられるというストーリーでした。このテレビCMは社長主導でテーマを選び、撮影にも立ち会われたそうですね。佐川急便の姿勢を具現化するものとして、社長の思いが込められているとうかがいました。

荒木 ストーリーはすべて現場の声をヒントにしています。当社は佐川男子という言葉や17年の1部上場などから、知名度はそれなりにある。さらにもう一歩進んで、一般の方、社員やその家族、就活する学生にも、魅力的な会社だと思っていただきたいです。

片桐 CMでも感じましたが、エンドユーザーにとってはドライバーの皆さんが佐川急便の代表です。会社のイメージを決定づける存在ですが、どんな社員教育をなさっているんでしょう。

荒木 階層別に研修は多いですが、基本となるのは安全と接客マナーの徹底指導です。新入社員が独り立ちするまでに最短でも2カ月はかかりますし、定期的に上司が確認しています。

片桐 現場で個々に判断しなければならない場面もあると想像するのですが、そういうときに拠り所になるのは何ですか。

荒木 「飛脚の精神こころ」ですね。ただ預かって届けるだけではない、荷物に込められた思いも一緒にお届けする。私がドライバーだった頃、「制服を着ている間は、一人ひとりが独立した経営者。経営者の視点で担当エリアの売り上げや接客について考えろ」と言われていましたが、自発的に考える姿勢が求められるのは今も同じ。若い世代には期待を込めて、電気・ガス・水道に匹敵する社会を支えるインフラの一つであることを自覚し、誇りをもってほしいと伝えています。上場企業で、日本を元気にするために働いているのですから。

技術革新が進んでも最後は人
異業種との連携は進む

撮影/渡辺 達生(小学館提供)

片桐 今年は元号が新しくなりますが、いろいろな業界で変化が起こる年ではないかと思っています。どの業界も、仕事の中身が大きく変わっていて、1社ではできないことが増えている。グループ横断に加え、他業界との連携を考えるべきです。御社や物流業界はどう変わるとお考えですか?

荒木 物流業界も変化の波にさらされています。他業種からの参入が脅威となることもあるでしょう。ニーズ自体が多様化しており、1社で対応するには無理がある。おっしゃるように外と連携して新しい技術やアイデアを積極的に取り入れていく必要があります。最近、私はスタートアップの方々と話す機会を設けています。もちろん必ずかたちになるとは限りませんが、若い人はスピード感が優れているし、技術力も高いと感じますね。

片桐 スタートアップの発想をかたちにして生産ベースに乗せるためには、大企業の組織力が助けになります。互いにいい関係性が築けるのでは。

荒木 AIやIoT、ロボティクスの導入は既に進んでいます。中継センターの省人化が実現し、次は無人化へ向かうでしょう。将来的には運送も自動運転になることが予想されます。しかしいかに自動化が進んでも、人間が届けるという最後の部分は変わらないのではないかと、私は思っているんですよ。

片桐 電気や水道に並ぶインフラを支えているというお話がありましたが、東日本大震災の際は特に、物流が重要なライフラインの一つであることを感じました。そういう御社の、女性活躍やダイバーシティーに対する真摯な取り組み、将来への展望をうかがって、心強く思います。

片桐圭子の編集後記

 荒木社長はご自身もドライバーのご出身とのことで、現場のことをよくご存じです。GOALは「GO Advanced Logistics」の略称。ビジネスとして大きなお話ですが、地に足が着いているというか、中身がしっかり詰まっているのを感じました。会社が進んでいくビジョンと同時に具体例もサラサラと挙げていただき、お話に説得力がありました。社員の皆さんも安心感があるのではないでしょうか。

詳しくはこちら

http://www.sagawa-exp.co.jp

提供:佐川急便