RUNNERs AERA

エネルギーが切れる前の補給が大事

「栄養を摂ることがゴールではありません。いかにエネルギーに変えて目標を達成するかが大事」と語るアスリートフードマイスターの佐々木晶子さん。自らもアマチュアランナーとしてフルマラソンを14回完走している佐々木さんに、レース前から本番当日までの食事の摂り方について教えてもらった。

佐々木 晶子さん

佐々木 晶子さん

山形県出身。アスリートフードマイスター1級。ランニングやロードバイクが趣味。キャリアカウンセラーとして活躍するかたわら、アスリート向けに食のワークショップや栄養サポートを行う。味や栄養だけでなくスタイリングにもこだわった独自のレシピを日々SNSで発信中。
https://akidelish.jimdofree.com

まず、ランナーが普段から心がけるべきことは何だろう。

「基本は5大栄養素をバランスよく摂ること。栄養素は一緒に摂ることで有効に働きます」と佐々木さんは言う。日々、トレーニングを重ねるランナーが特に心がけるべき栄養素として挙げたのは次の三つだ。一つ目はパフォーマンスアップに欠かせない糖質。ただし、「体にいいものが必ずしもランナーにとってよいものとは限らない、ということを忘れないでください」という。

「玄米やヒジキなどは繊維質が多く消化に時間がかかります。もちろん体にはいいのですが、消化するのに血液が消化器官に集中してしまうため、トレーニングした日の食事には向きません。玄米より白米、全粒粉パンより食パン、そばよりうどんというように、茶色より〝白い〟食べ物を選ぶとよいでしょう」

二つ目は、その糖質を効率よくエネルギーに変換するビタミンB群。特に豆、豚肉、緑黄色野菜などに含まれるビタミンB1は必須とのこと。そして三つ目が、鉄分。「固い地面を走り続けていると、衝撃のかかる足底で赤血球が壊れてしまうと言われているので※、鉄分は欠かせません」

2018年6月には、故郷・山形で開催された「さくらんぼマラソン」に出場。地元のブランド米・つや姫をPRする「つや姫レディ」とニッコリ。過去に出場した大会はすべて完走しているという

総カロリー変えず糖質増を

大会に向けた食事はどうか。「レース3日前からは、消化の悪い揚げものや生ものを避け、糖質メインの食事にするのが基本」。ただし、このとき注意すべきなのは、総カロリーを変えないこと。糖質を増やしたぶん、たんぱく質や脂質を減らさないと、カロリーオーバーになってしまう。「体重が1kg増えると、タイムが3分落ちる、と言われているので要注意です」とアドバイスする。

水分も重要な要素だ。「アルコールやカフェイン入り飲料は利尿作用があるので控えたほうがいい」とのこと。当日は「スタートまでに250〜500ml摂るのが理想」だが、1回の給水で体が吸収できる量は150ml程度なので、少量ずつ飲むのがポイントだそうだ

朝食はレース3時間前には食べ終え、本番前にお腹が空いたら、軽い腹もちがあってすぐエネルギーになる半固形状の飲みものがおすすめ。栄養価が高く消化もよいカステラなどの補給食は、用意しておくと安心材料になるという。

初めて食べるものは要注意

そして何より重要と佐々木さんが語るのは「エネルギーが切れる前に栄養を補給すること」だ。これは「体が欲してからでは、エネルギーになるまでに時差が生じる」ため。のどの渇きを感じる前に水分を摂ることも同様に重要だ。ただし水よりは、糖質とナトリウムを含むスポーツドリンクがおすすめ。ブドウ糖タブレットや塩飴を携帯するのもよいそうだ。レース後は体をケアするため、なるべく早く栄養を補給するのが原則だ。

最後のアドバイスは、レース前のシミュレーション。「いくらよいと言われているものでも、自分に合わない可能性もあるので、本番で初めて口にするのはおすすめしません」と佐々木さん。そのために、レース数週間前からは食事を含め、起床から本番まで想定して行動するとよいとのこと。「あれこれ考えることが多いと、脳のエネルギー消費も増えます。当日までに不安要素はなるべく排除し、余裕をもってレースに臨むことを心掛けましょう」。

佐々木さんが考案した手づくり補給食の一つ、「簡単ライススティック」。白だしと鰹節で米を炊き、棒状にしたもの。簡単につくれて食べやすく、素早くエネルギーを補給するのに最適だ
※フットストライク溶血
足底部への強い衝撃により、赤血球が崩壊してヘモグロビンが血球外に溶出する現象