社会を知る、共に生きる。vol.1 社会を知る、共に生きる。vol.2 社会を知る、共に生きる。vol.3 社会を知る、共に生きる。vol.4 社会を知る、共に生きる。vol.5 社会を知る、共に生きる。vol.6 社会を知る、共に生きる。vol.8

北川浩学長(以下、北川) 昨年、武蔵野市長に就任されました。武蔵野市をどんな街と捉えていますか。
松下玲子市長(以下、松下) 武蔵野市は人口約14万5千人、面積は約11平方キロメートルと、とてもコンパクトな街です。吉祥寺があるので「若者の街」のイメージが強いですが、実は「福祉の街」として先進的な取り組みが多い。全国に広がった「コミュニティバス」は発祥の地ですし、ボランティア活動も熱心です。
北川 そうそう、意外ですが、街には高齢の方も多いですよね。世代に偏りがない。「若者の街」というより、むしろ「無世代の街」でしょうか。
松下 そうですね。いま重点的に取り組みたい課題のひとつが、少子高齢社会への対応。子育て支援や待機児童解消など、子育て世代に向けた取り組みもそうですが、高齢者のみなさんの住み慣れた地域で安心して暮らし続けたいという思いも叶えたい。地域の支え合いのしくみを積極的につくっています。

「ミクストコミュニティが大事。どこかの世代に偏るのではなく、幅広い世代のみなさんがともに暮らし、支え合えたら」

成蹊大学は開学の翌年(昭和25年)、地域貢献のため武蔵野市の調査を行った。7年ほどかけて上・中・下の3冊にまとめたという

松下 成蹊大学の先生には、市の取り組みにも深く関わっていただいていますね。文学部の渡邉大輔先生には市の長期計画づくりに携わっていただいていますし、小田宏信先生や、見城武秀先生、元文学部の高田昭彦先生にもお力をお借りしています。
北川 市民として議論に参加している教員もいますね。
松下 はい。市民自治の実践者、先導者、というイメージです。
北川 そもそも本学は、開学当初から地域との共生を意識してきました。大学開学の翌年(昭和25年)には、武蔵野市に貢献したいと、教員や学生総出で市の調査を行っています。政治班、経済班、娯楽班、交通班などに分かれ、映画館の入場者数から交通量、地盤や地質の調査まで行ったそうです。
松下 そうでしたか。共生の姿勢は、戦後から連綿と続いているのですね。
北川 ええ。でも当然の姿勢だと思っています。成蹊学園には小学校、中学高等学校、大学が併設していますから、子どもたちが地域にご迷惑をおかけすることもあるかもしれない。また、本学をひとつの事業所として見ると、武蔵野市の中では規模も大きいため、ゴミの排出量もエネルギーの消費量も極めて多い。地域にご迷惑をおかけしているとしたら、共生のために何かできないか、という考えに至るわけです。上空から見ると成蹊学園は森のように見えますが、これは地域の環境保全を意識しているからなんですよ。
松下 それはすごいですね! 
北川 大学では地域課題を研究する「吉祥寺プロジェクト」を行っています。点字ブロックの敷き方を研究したり、ゴミの分別や収集日をお知らせする「武蔵野市ごみアプリ」を開発したり。大学のミッションは社会に優秀な人材を送り出すことですが、私は「社会的責任を果たす存在でありたい」とも思っています。企業だと「CSR」といいますが、大学では「USR」。「University Social Responsibility(ユニバーシティ ソーシャル レスポンシビリティー)」ですね。

「教室で本を読むことも大事だけど、いろんな世代の人と交流することは、人間の成長のなかで大事な機会」

松下 成蹊学園は小学校からあり、みなさんとても仲がいいですよね。私が以前勤めていた会社には「成蹊会」があって、会社でよく集まっていました。
北川 開学当初から「心と心が触れ合うことで初めて教育ができる」という考えがあるため、教員と学生の距離も近いですね。一緒にお茶やお酒を飲んだり、旅行したり。
松下 すばらしいですね。
北川 「学びは教室の外にもある」という考えも開学当初からのポリシーで、なんと100年前から頻繁に遠足や社会見学に行っていたそうです。また、文理融合の考えもそう。社会に出たときに違う分野の人たちと協力しあえる教育を心がけています。他人の気持ちや痛みがわかり、共生社会を支える根幹となる豊かな心、人格、品性を育むことができたら、と思います。
松下 そうですね。共生社会の実現に欠けているものは「寛容」だと思うんです。電車の中で赤ちゃんが泣いていたら舌打ちするようなギスギスした社会では、人々はどんどん萎縮し、暮らしにくくなってしまう。
北川 物事が発展するときは、どこかにしわ寄せがくることが多いのですが、「共生」とは「しわ寄せのない進歩」ということ。ある一部の人たちの苦しみを土台にして繁栄していないか、犠牲になっている人はいないか、常に気を配る必要があると思います。
松下 そうですね。おかげさまで武蔵野市は、未来の担い手である子どもの数が少しずつ増えています。子どもは高齢者のみなさまの支え手でもあります。一人ひとりを大切にする市民自治の歴史があるからこそ、困ったときに身近で支えられるあたたかい街づくりをしていきたいと思います。
北川 いま、日本社会全体が余裕を失って、どんどん寛容でなくなる方向に動いていますからね。
松下 他者を尊重し、同化ではなく違いを認め合う。それが「共生」ですよね。さまざまな人が共生する社会を武蔵野市でも実現したい。これからも地域のみなさんや成蹊大学と連携していけたらと思います!

大学と地域の共生について語る松下市長(左)と北川学長

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成蹊大学 
http://www.seikei.ac.jp/university/

武蔵野市 
http://www.city.musashino.lg.jp/

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提供:成蹊大学