地方創生に向け、古都・京都に文化庁が移転 文化で日本を元気にする Mayor of Kyoto interview

東京一極集中の是正に向けた省庁移転の動き。京都では今年4月、文化庁の全面的移転に先行して「地域文化創生本部」が設立される。これを機に、京都の街は、日本の文化行政は、どのような変化を迎えるのか。京都市長・門川大作さんに今後の展望を聞いた。

文/宇田川 有佳 撮影/スケガワ ケンイチ(人物) 企画・制作/AERA AD セクション

人と文化の育成を復興の原動力に

 京都市では昭和47年、全国に先がけて景観条例を制定している。昭和53年には「世界文化自由都市」を宣言。以来、約40年にわたり、文化を基軸としたまちづくりに取り組んできた。それは、先人たちの成功体験から学んだことだ。

 「明治2年、天皇陛下がちょっと行ってくると言って東京に行かれた時、京都の人口は約33万人から一気に約23万人まで落ち込みました。そこで京都の先人たちは、〝竃金の精神〟で行動した。人の育成、文化・芸術、ものづくりこそが、京都復興の要だという信念に基づき、皆でお金を出し合い、地域に64の小学校を作り、運営したんです」

 さらに明治13年には、日本初の画学校(現・市立芸術大学)を、明治19年に日本初の工芸技術学校(現・市立京都工学院高校)を創設。戦後、昭和31年には、日本で唯一の自治体直営のオーケストラ、京都市交響楽団を設立するなど、独創的な発展を遂げてきた。

 厳しい時代だからこそ、文化芸術を心の拠り所にし、文化の担い手を育て、新たな文化を創造する。そうして、幾たびも困難を克服してきた京都の歴史は、人口減少社会という問題を抱えた現代の日本において、良い成功モデルになると門川市長は言う。

 「京都のあらゆる文化は、全国津々浦々の伝統産業や地場産業とつながって生まれたもの。日本中から良いものを取り寄せ、融合し、新たな価値を創造しながら、発展してきました。しかしいま、日本の伝統産業は衰退し、地方は疲弊している。京都も例外ではありません。では、この局面をどう乗り越えるか。日本が誇るここ京都から、全国とつながり新たな価値を創造し、世界へと発信していくことで、日本中を元気にできると考えました」

京都の風景

“オール京都”で新たな価値を創造する

 文化の拠点を再び、京都へ、関西へ——。この春から、一部先行して始まる文化庁の移転は、京都はもとより、関西にとってまさに悲願だったと語る。

 「新たな文化行政のスタートを皆で喜ぶと同時に、責任の重さも感じています。日本中が元気になるように、我々もしっかり役割を果たさなければならないですから」

 ここに至るまでの道のりは長く、昭和63年に「文化・学術関係機関」の移転の要望を申し入れてから足掛け30年。平成11年には、文化とは京都市民の生き方であるとの市の基本構想を策定し、本物を見抜く力や匠の技、おもてなしの心など、市民の〝得意技〟を生かした、文化財保存や観光振興、景観保全に努めてきた。

 平成14年には正式に文化庁の移転を要望。同時に、日本の財産、世界の宝である京都の価値を守り、生かし、創造する“京都創生”を新たなテーマに据え、まちづくりを推進してきた。そうした京都の取り組みは次第に、世界の注目を集めるようになる。

 「Do you KYOTO? ※」

門川市長写真 門川 大作 京都市長

1950年、京都市中京区城巽地区に生まれる。京都市教育委員会事務局では総務部長、教育次長を経て、京都市教育長を務めた。2008年に京都市長に就任、現在3期目。内閣「教育再生実行会議」、文部科学省「中央教育審議会」にも有識者として参加。世界歴史都市連盟会長、世界文化遺産地域連携会議会長も務める。

 平成19年、「第3回気候変動枠組み条約締約国会議」の10周年記念行事に参加したドイツのメルケル首相のスピーチは、とりわけ感動的だったと門川市長は振り返る。

 「京都という名前は、世界で環境にいいことをするという代名詞、動詞にもなっています、とおっしゃって。京都人として使命感を持たなくてはと、背中を押していただいた気がします」

 同年、京都市では建築基準条例の改革に着手。建物の高さやデザイン、屋外広告物などの規制を見直し、内容を強化した「新景観政策」をスタートさせた。

 当時は、規制緩和により、日本中で高層ビルの建築ラッシュという時代。当然ながら、規制は経済の活性化に反するという声も上がったという。だが、満場一致で条例案が議会を通過すると、市民も一致団結。市内約3万の建物から看板が撤去・是正され、町の景色は一変した。現在は、寺社仏閣などの38カ所に「視点場」を設け、眺望景観や借景を乱す建物や建築計画を規制しているが、今後はさらに視点場を大幅に増やす計画だという。

※ 京都から世界に向けて発信する「環境にいいことしていますか?」という意味の合言葉。

詳しい情報はこちら

京都市ホームページ

http://www.city.kyoto.lg.jp/

提供:京都市