【PR】社会的健康戦略って何? 大学生の若い知恵が考えたこれからの企業の「健康経営」

三つの大賞のほか、三井住友海上火災保険株式会社の課題、自己保健能力向上プログラムでも3位を獲得する好成績を残した横浜市立大学柴田ゼミの面々。課題制作は主にリモートで行われ、取材当日は久しぶりの集合だった
三つの大賞のほか、三井住友海上火災保険株式会社の課題、自己保健能力向上プログラムでも3位を獲得する好成績を残した横浜市立大学柴田ゼミの面々。課題制作は主にリモートで行われ、取材当日は久しぶりの集合だった

 昨年11月、一般社団法人 社会的健康戦略研究所による「大学対抗『健康』×『マーケティング』コンペティション 2020」(後援:株式会社朝日新聞社)の結果発表が行われた。全国13大学で経営やマーケティングを学ぶ16ゼミ・48チームが参加したこのコンペは、協賛企業が出題する「健康」をテーマにした企業活動の課題に大学生が施策提案をするものだ。これはこれから社会人となる大学生にとって貴重な体験となっただけでなく、コロナ禍がもたらした新たなパラダイムに直面する企業にも、実り多き経験となった。

■健康経営の礎「社会的健康」を定める

 社会的健康戦略研究所は、従来漠然と捉えられてきた「健康」を定義づけし、社会的健康を確立することで、持続可能な共生社会の実現に努める。研究所会員は多種多様な企業から組織されている。代表理事の浅野健一郎氏は語る。

「我々が目指すのは、個々の精神と身体が健やかな社会環境の構築、そのうえでの企業発展と社会課題解決の両立です。そこで要となる健康を、身体的、精神的、そして社会的に満たされている“いきいきとした”状態……つまり病気であっても健康という状態は存在すると定義づけています。これはWHO(世界保健機関)憲章の前文でもうたわれていますが、日本は対疾患対策が活発な一方、心を満たす、社会的健康を満たす活動が成熟していない。これが従来の健康施策が空回りする要因だったのではないかと考えました」

一般社団法人 社会的健康戦略研究所代表理事 株式会社フジクラ健康社会研究所代表取締役・CEO 浅野健一郎氏。今後のコンペを通じて、社会的健康をより学術的・業際的にしていきたいと願う
一般社団法人 社会的健康戦略研究所代表理事 株式会社フジクラ健康社会研究所代表取締役・CEO 浅野健一郎氏。今後のコンペを通じて、社会的健康をより学術的・業際的にしていきたいと願う

 当研究所では、経済産業省主導で推進されている健康経営を軸に、職域・学域・地域など部会ごとに社会的健康を実装すべく活動を行っている。

「特に学域においては、学生の段階から健康リテラシーを高めていく必要があります。今の企業が健康経営を行なっていたとしても、そこに“健康とは何か”を理解した学生が社会人となって入っていけば、もっと効果的でより良いものになるはずです。。そこで現実的なアプローチとして、経営やマーケティングを学ぶ大学生を対象にしたコンペを主催しました。参加を通じて健康に関する知識を高めてもらうことで、自らの力で社会を変えていく意欲のある学生を増やすことが、このコンペティションの基本理念です」

 当研究所はアカデミアではなく、課題解決策を社会に実装させるための研究所だが、コンペ主催にあたり、大学で経済学やマーケティングを教える教職者も参画している。マーケティングのヒエラルキー最上位に健康があることを知り、また、SDGsをはじめ企業がビジネスを根幹から考え直す時代に健康メインの施策提案を考えるこのコンペは、学生の社会人基礎力を培う経験になったという。

■企業が直面する「健康」が課題に

 課題を提出する参加企業には、「健康」というシンプルなキーワードだけが通達された。あえて縛りを設けずとも、コンペで施策提案を受けるためには、課題の背景となる自社の健康の定義が明確でなければならない。

「健康増進に向けた従業員の行動変容を促すための企業の取り組み策、第一生命として提供するサービス・保険商品とは」という課題を出した第一生命保険株式会社は、健康経営を実施する取引先企業から聞いた、健康経営に対する悩みや従業員を健康行動に導くための模索を題材にした。応募作品の中には、社内では出ないであろう学生ならではのアイデアや、会社にとって中長期的なメリットとなる要素を提示する内容もあり、学生の視野の広さに感銘を受けたという。

第一生命保険株式会社 団体保障事業部 団体保険商品企画課 ラインマネジャー 西川 将純氏
第一生命保険株式会社 団体保障事業部 団体保険商品企画課 ラインマネジャー 西川 将純氏
第一生命保険株式会社 団体保障事業部 団体保険推進課 ラインマネジャー 上海道 一哉氏
第一生命保険株式会社 団体保障事業部 団体保険推進課 ラインマネジャー 上海道 一哉氏

 お客様の”働く空間づくり”を支える株式会社イトーキの課題は「ポストコロナ時代のウェルビーイングな働き方を実現させるビジネスとは」。参加ゼミの大学生が実際に社会に出る数年後に、彼らがどんな働き方を求めているかに興味があったそうだ。実直なマーケティング活動を感じさせるプレゼンテーションが多く、三つの新規事業の提案で事業の拡大観点まで盛り込まれた案を大賞に選んだ。次回参加するのであれば、各ゼミが提案したビジネスの立ち上げ後に直面する課題への対応自体を課題にしても面白いのではないかと話す。

株式会社イトーキ 商品開発本部 ソリューション開発部 佐々木 世紀氏
株式会社イトーキ 商品開発本部 ソリューション開発部 佐々木 世紀氏

 三井住友海上火災保険株式会社、株式会社丸井グループ、株式会社ハローデイホールディングスを含め、参加企業5社が出した課題それぞれに、約10件の施策提案が集まった。経営、マーケティングを学ぶ全国各地の“未来の社会人”が提案する事業は、やがて彼らの世代を新入社員として迎える企業には興味深いものであり、準備期間の学生とのやり取りを通じて、現行の業務に対する気づきや、次世代感覚を知るきっかけになった。

■学びを実現可能な提案に生かす難しさ

 コンペ準備期間中は、学域の健康戦略のメインテーマ“自己保健能力を高めてもらう”ことを目的に、参加学生は延べ10週間にわたりLINE(※)で通知される健康教育と自室で行う運動にもリモートで参加した。コロナ禍で、この体験だけでなく打ち合わせや作業もすべてオンラインで行ったという横浜市立大学国際総合科学部経営科学系の内園貴子さん(大学3年・チームほか2名)は、株式会社丸井グループの課題で大賞を受賞した。

「これまで“売れる仕組み”としてマーケティングを学んできたので、企業の健康への取り組みを考えるために、まず社会の仕組みを理解することから始めました。既に社会人として働くゼミの先輩方に意見を求めるなど、リモート主体という環境をフルに生かして提案を考えるなかで、いろいろな意味での柔軟性が身についたと思います」

横浜市立大学国際総合科学部経営科学系3年・内園貴子(きこ)さん。普段から運動を心がけているが、LINE(※)のプログラム参加で体の仕組みを理解した効率的な鍛え方も習得した
横浜市立大学国際総合科学部経営科学系3年・内園貴子(きこ)さん。普段から運動を心がけているが、LINE(※)のプログラム参加で体の仕組みを理解した効率的な鍛え方も習得した
横浜市立大学国際総合科学部経営科学系3年・内藤亜美さん。今回のコンペ参加を通じて健康に関して学んだことを、自分だけでなく家族や周囲の人たちに広めることに意義を感じた
横浜市立大学国際総合科学部経営科学系3年・内藤亜美さん。今回のコンペ参加を通じて健康に関して学んだことを、自分だけでなく家族や周囲の人たちに広めることに意義を感じた

■“時間のある学生”だからこそ綿密な調査に

 三井住友海上火災保険株式会社の課題において3位、そして主催者である社会的健康戦略研究所からの大賞を受賞したのは、横浜市立大学国際総合科学部経営科学系の内藤亜美さん(大学3年・チームほか2名)だ。

「企業説明会に参加して企業の考え方を理解し、そのうえで、健康経営だけでなく、中小企業の人手不足・精神障害に関する労働災害の請求件数増加・地方の人口流出にも着目し、健康経営の普及と働き方の多様化、関係人口を考察しました。このSDGsも視野に入れた点が良かったのかなと思います」

 彼女たちと同じゼミに所属する岩瀬琉玖さん(大学3年・チームほか2名)は、前述の第一生命保険株式会社の課題で大賞を受賞。

「今回の提案作成を通じて、就職活動で企業の福利厚生や健康理念を理解しても実際は機能していないケースもあると知り、従業員の行動心理の検討に消費者行動論など生かせるのではないかと考えました」

横浜市立大学国際総合科学部経営科学系3年・岩瀬琉玖(りゅうく)さん。健康状態を継続させるためには日々の積み重ね、行動の習慣化が大事だと痛感し、日常の過ごし方も変わったという
横浜市立大学国際総合科学部経営科学系3年・岩瀬琉玖(りゅうく)さん。健康状態を継続させるためには日々の積み重ね、行動の習慣化が大事だと痛感し、日常の過ごし方も変わったという
横浜市立大学国際商学部准教授柴田典子氏。課題選択から学生たちに一任し彼らの創造性、計画性に期待した結果、予想以上の評価を得られたと語る
横浜市立大学国際商学部准教授柴田典子氏。課題選択から学生たちに一任し彼らの創造性、計画性に期待した結果、予想以上の評価を得られたと語る

■企業が直面する問題に触れられる好機

 自身が指導するゼミから大賞受賞チームが続出した横浜市立大学国際商学部の柴田典子准教授は、今回の体験が自分の働き方を考えるきっかけになったのではないかと語る。

「座学で得る理論面での知識を現実に当てはめて理解し、課題への合理的な取り組みを実践したことで、自分も社会の一員であることを実感できたと思います。企業が抱える現実の課題に方策を構築するプロセスは、非常に貴重な学修でした」

 柴田ゼミの功績を知り、2021年5月中旬から開催予定の第2回に参加したいという教員もいるそうだ。健康経営、社会的健康の実装を担う健康リテラシーの高い次世代の輩出は、健康に満たされた真に豊かな社会を実現していくカギとなるだろう。

第2回に関するお問い合わせ、社会的健康戦略研究所に関してはこちら

※「LINE」はLINE株式会社の商標または登録商標です

提供:一般社団法人 社会的健康戦略研究所

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