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[PR]これからの歯科が担う新しい役割を考える 日本私立歯科大学協会第7回歯科プレスセミナー開催

取材・文/佐藤淳子 企画・制作/dot. AD セクション
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●私学から始まった日本の歯科教育

 日本の歯学教育が一般医科の教育と異なる形で進められてきたことを知っているだろうか。これは、ときの明治政府が「歯科は富国強兵政策とは直接関連しない」という理由で国立大学に歯学部を設置しなかったためである。以来100年以上にわたり、日本の歯科医学教育の確立に大きく貢献したのが私立大学だ。1976年には一般社団法人日本私立歯科大学協会が設立され、現在、日本の私立歯科大学15、歯学部17がすべて加盟している。
一般社団法人 日本私立歯科大学協会 井出吉信会長

一般社団法人 日本私立歯科大学協会 井出吉信会長

 同協会の会長をつとめる東京歯科大学学長の井出吉信氏は「超高齢化社会の中で歯科医に求められる役割も変化してきた」と語る。かつて、歯科医の主たる役割は虫歯の治療だったが、高齢化社会の到来に伴い、歯周病、さらに歯周病を起因とするさまざまな疾患へとその範囲は拡大している。歯科医療は、健康寿命を支える要素としてその重要性が増しているだけでなく、スポーツにおけるパフォーマンス向上などにも深く関わることから、今後、歯科医の活躍の場はますます多様化すると予測される。

●60年で10倍に増加した口腔ガン

 一般社団法人日本私立歯科大学協会は、設立以来、こうした歯科医療や歯科医学教育、研究などについての情報を広く国民に向けて発信してきた。「歯科プレスセミナー」もその一環である。7回目を迎えた今回は、「口腔病理」をテーマに2人のエキスパートが講演を行った。
松本歯科大学 歯学部長、口腔病理学講座教授 長谷川博雅氏

松本歯科大学 歯学部長、口腔病理学講座教授 長谷川博雅氏

 最初に登壇した松本歯科大学歯学部長の長谷川博雅氏は、口の中の病気には、虫歯や歯周病以外にも、ウイルスやカビを原因とする疾患、嚢胞、アレルギー、ガンを含む腫瘍、先天性の奇形や疾患、外傷などさまざまあると指摘。なかでも注意すべきものとして言及したのが、口の粘膜に起こる口腔ガンだ。口腔ガン(および咽頭ガン)による死亡者数は、厚生労働省の人口動態調査によれば、この60年で実に10倍に増えているという。カンジダ症、口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)、白板症、紅斑症など、それ自体はガンではないが将来ガン化する可能性のある口腔ガン予備軍にはさまざまな疾患があり、細菌感染、折れた歯や壊れた入れ歯、喫煙、ストレスなどの刺激がリスク要因となるそうだ。2015年の国立がんセンター発表データでは、ガン死亡の2%を占める。これは膀胱ガンや白血病に匹敵する割合で、「決して無視できない数字」と長谷川氏は語る。

 「口腔ガンは基本的には切除するしかありません。患者さんのQOLを保つためには、初期に発見して取り除くことが重要になります。幸い、口の中は直接見て触ることができるため、細胞の採取は簡単。歯科医での検診を心がけてほしいと思います」(長谷川氏)

●ASEAN諸国への教育援助の推進

 「世界的にも最高水準を誇る」(井出会長)日本の歯科医療は、アジア諸国でも貢献している。口腔病理の分野も例外ではない。現在、日本にいる口腔病理医は133名と決して多いとはいえないが、アジアでは最大だ。

 セミナー後半には、2010年から12年にかけてアジア諸国での口腔病理診断および歯科医療の現状を調査した愛知学院大学歯学部口腔病理学講座教授の前田初彦氏が登壇、ASEAN経済圏確立後、日本が各国の歯科医療に関与していく戦略について語った。
愛知学院大学 歯学部口腔病理学講座教授 前田初彦氏

愛知学院大学 歯学部口腔病理学講座教授 前田初彦氏

 アジア諸国では口腔ガンの発生率が高い。これにはヤシ科の植物であるビンロウの種を噛む習慣が大きく関わっているのではないかと考えられているが、データ整備の遅れから実態はつかめていない。いずれにせよ、国による差はあれ口腔病理の診断体制が整っていないのは明らかで、予防や早期発見への啓蒙が急務となっている。そのために求められるのが口腔病理教育の充実だ。

 前田氏が教鞭をとる愛知学院大学では、アジア諸国から歯科医師や教員を招聘し、口腔病理医として教育、母国で教育にあたるリーダーの養成をはかるなどしているが、日本から教員を送る必要性も訴える。
口腔病理教育のための設備や制度が整っていなくても、自国の国民医療に貢献するという強い意志を持った学生が多かったという(写真はカンボジア プノンペン大学歯学部で講義を行う前田氏)

口腔病理教育のための設備や制度が整っていなくても、自国の国民医療に貢献するという強い意志を持った学生が多かったという(写真はカンボジア プノンペン大学歯学部で講義を行う前田氏)

モンゴルで口腔病理診断教育研修をする前田氏。2017年8月にも再訪の予定だという

モンゴルで口腔病理診断教育研修をする前田氏。2017年8月にも再訪の予定だという

「ASEAN経済共同体発足後は、シンガポール経由で中国系の教員が増えることが見込まれ、日本も戦略を立てなければ、他国に遅れをとることになります。日本の立ち位置を明確にするうえでも継続的援助は必要でしょう。教員が多く、施設も充実している私学をぜひ利用してほしい。『教育援助』枠での国から私立大学への援助を要請したい」(前田氏)

 一方、アジアの新興国では、都市部と発展の遅れる郡部との医療格差も問題となっている。これに対して前田氏が提案するのは、特定非営利活動法人日本口腔粘膜機構が立ち上げた遠隔医療システムJOMNETを活用した口腔ガンのスクリーニングだ。このサーバーを使ってアジアの医療現場から携帯電話で画像を送信してもらい、日本の口腔病理医が診断、アドバイスする。まずモンゴル、ラオス、ベトナムでの実用化を目指す計画だ。「大事なのは『今すぐできる援助』を『継続して行う』こと」と前田氏は語る。
インタビューに答える前田氏

インタビューに答える前田氏

 さらに、限られたインフラを活用した遠隔診断がアジア郡部で成立すれば、それをリバースイノベーションとして日本の無医村などに適用することも可能だ。国内の医療格差解消という観点からも、大きな期待が寄せられている。

※私立歯科大学協会の取り組みなど、詳細はこちら(外部リンク)

提供:一般社団法人 日本私立歯科大学協会


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