『京大式へんな生き物の授業』
朝日新書より発売中

 この本では、筆者が22歳から魅了され続けている「目に見えない世界」、つまり単細胞の生き物の生き様がいかに多様であるか、そしてその多様性を生み出してきた進化がどういうものであるかについて紹介している。

 筆者がこの「見えない世界」に飛び込んだのには、京都大学農学部の授業で微生物の世界をいかに知らなかったかを思い知らされたからだ。

 80度を超える高温の世界で生きるもの、酸素の無い世界で生きるもの、などなど、この世の極限で暮らす微生物たちや、次々に見つかる新たな仲間。世の中には知らないことがたくさんあることを実感することができ、その一つ一つを自身で解き明かしたくなった。

 生き物の世界は、まだまだ分かっていないことも多いし、そもそも何が分かっていないのかが分かっていない。そして20年近く経とうとしている今も、「何が分かってないのか」を知ることを楽しんでいる。

 そんな微生物を含め、すべての生き物は進化している。一般にテレビなどで耳にする進化とは「いいものになる」ことを指していることが多い。もちろんそれも進化の一つである。ただし生き物の進化とは必ずしも「いいものになる」だけの話ではない。「何かを失う」ことも進化であるし、「良くも悪くもないものに変わる」ことも進化である。もちろん「致命的ではないが若干不利」ということも進化では生じうる。

 もちろんいい変化、有利になる変化であれば子孫に受け継がれやすい、ということもあるだろう。これは自然選択と呼ばれる。一方で、場合によっては良くも悪くもない変化でも子孫に受け継がれて広まることがある。

 常に良いもの・有利なものだけが生み出されてきたわけではなく、様々なタイプの変化の蓄積と紆余曲折が現在の生き物の多様性だと考えるべきである。

 この本ではまず現在地球上に存在する生き物を研究者がどのようにグループ分けしているのか、そしてそれらはどのような紆余曲折を経て理解が進んできたのか、そして何が分かっていないのかを紹介した。ごく最近に見つかった新たな生き物の話、新たな生き物が見つかった!とされていたのに違った話、などできるだけ簡易な言葉で説明したつもりである。

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