3月号朝日新聞編集委員 藤田直央Fujita Naotakaコロナ禍前の12日間、ドイツの気概感じた旅 (1/2) |AERA dot. (アエラドット)

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3月号
朝日新聞編集委員 藤田直央Fujita Naotaka
コロナ禍前の12日間、ドイツの気概感じた旅

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『ナショナリズムを陶冶する ドイツから日本への問い』
朝日選書より発売中

 日本政治を追ってきた私が40代後半になってドイツを歩き、この本を出せる不思議さ。多くの方々の支えに感謝しつつ、本の紹介がてら少し打ち明け話をしたい。

 コロナ禍が欧州に広まる少し前、昨年2月の12日間の貴重な旅だった。外国人用のドイツ鉄道乗り放題パスを駆使して各地を巡り、取材を重ねることができた。

 テーマはナショナリズム。私なりの定義は「国民がまとまろうとする気持ちや動き」だ。国民を主人公とする近代以降の国家ならではの現象と捉え、神とも悪魔とも思わず、ジャーナリストとして向き合ってきた。

 日本国と国民の象徴である天皇が代わり、翌年に東京五輪が迫る一昨年、日本のナショナリズムを掘り下げようと各地を歩き、朝日新聞や論考サイト「論座」で連載をしたが、見えてこない。そこで海外の視点を得ようと考えた。

 とはいえ特派員経験のない私にこうした海外出張は手探りだった。幸い、国際的なテーマを扱う朝日新聞の月刊別刷り「GLOBE」編集部の社内企画公募に応じた「ナショナリズム」が通り、相談に乗ってもらえた。

 実はまず韓国の取材をと考えていた。日本が解決済みとする植民地支配当時の徴用工や慰安婦に対する賠償問題を韓国が持ち出し、日韓関係は最悪に陥っていた。

 ナショナリズムは各国で語られる歴史に影響される。日本は近代国家を築く過程で韓国を植民地とし、韓国が近代国家となった原点はその支配からの脱却であるなら、どうすれば真の和解に達するのか。そんな問題意識だった。

 ところが2020年に入るとコロナ禍が東アジアで先行し、韓国での取材計画がなかなか立たない。GLOBE編集部からは4月号掲載へ向けもう1カ国行ってはと言われており、選んだのがドイツだったというわけだ。

 もちろんドイツは「ついで」ではなかった。敗戦、占領、国家再建という日本との相似形に加え、冷戦下の東西分断から再統一されて30周年を迎えていた。ナショナリズムの取材対象としてむしろ本命だった。

 ただしドイツのナショナリズムを語るには、巨大な闇に分け入らざるをえない。「一つの民族、一つの国家、一人の指導者」を掲げ、大量虐殺と侵略を行ったナチズムだ。


(更新 2021/3/ 1 )


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