依存症のルールは、「借金」と似ています。もちろんお金を介するのではなく、依存物を使うことによる現在の「快楽」と引き換えに、将来の「不快」を負う可能性があるのです。まさに「脳内借金」です。リアルな借金と違って数字で示されないので、自覚しにくいだけです。責任能力の不完全な多くの未成年者が、スマホ依存という数字化されない「脳内借金」をしているのです。

 ところで、(電子)ゲームの登場は20世紀に入ってからです。1970年代よりゲームは一般に普及しましたが、本格的に依存性を持ち始めたのは20年ほど前のオンラインゲームの登場からです。インターネットやスマートフォンの普及もこの20年程度の出来事です。古来、人間は様々な依存物とうまく付き合おうとし、失敗を重ねてきました。そして成功しているとは言いがたいものの、ある程度の依存症対策を見出しています。本書では覚せい剤とアルコールの例を挙げましたが、ゲームにも相通じるところがあると私は信じています。スマホ(ゲーム)も「依存物」として認識すれば、この「依存物との闘いの歴史」が繰り返されているだけです。スマホをはじめ、依存物とうまく付き合う特別な方法も特効薬も今のところ開発されていませんが、依存症のルールを知りこれまでの歴史に学べば、次になすべきことがおのずと見えてくるはずです。

 本書は、「スマホ依存」「ネット依存」「ゲーム障害」などの類書と異なり、単なるハウツー本でもありませんし、専門書でもありません。「依存症」独特のルールをわかりやすく説明したうえで、人と依存物との付き合いを振り返り、そのうえでスマホ依存について詳説しています。読み終えたときには、スマホという便利でやっかいな依存物にどのように接したらよいのか、そして自分の大切な人たちにどのように付き合わせたらよいのかという現代社会の難題に、自信をもって相対することができるでしょう。