そのためには、外に出かけていき、人と話し、新しい何かに挑戦する。これらを意識的に行うことが重要だ。刺激を与え続けることで、感情は若々しさを保つことができる。

 また、意欲の低下は前頭葉の萎縮だけでなく、男性ホルモンの減少によっても引き起こされる。

 女性の更年期障害の症状の中には、のぼせやほてり、イライラなどの他に意欲の低下や倦怠(けんたい)感があるが、男性にも同様の症状がみられる。

 以前、更年期障害は女性特有のものと考えられていたが、昨今、男性にも更年期障害があることが知られ、治療の必要性を指摘する声も高まっている。

 糖尿病患者がホルモンの一種であるインスリンを投与するように、減ってしまった性ホルモンは、補充することで症状を緩和できる。

 また、性ホルモンは外から取るだけでなく、食生活や生活習慣を変えることで増やすこともできる。そして、性ホルモンが増えれば、気持ちも外見も若返る。

 つまり、性ホルモンを増やす努力をすることで、男女ともにつらい更年期の症状を緩和し、やる気を取り戻し、老化に歯止めをかけられるのだ。

 人生を四季にたとえるなら、老年に入る一歩手前の40~60代は「秋」。大人になり始める時期を思春期と呼ぶのになぞらえて「思秋期」と呼ぶことができる。

 そして、思春期の過ごし方でどんな大人になるかが決まるように、思秋期をどう過ごすかによって老年期のあり方が変わってくる。

 日本人の寿命は延び続け、いまや100歳まで生きることは決して珍しくない。定年後、少しのんびりしているうちにお迎えが来るというような時代は過去となり、働いていた時間と同じくらいの長い老後が待っているのだ。

 体力や知力の衰えより一足先に訪れ、人知れず進行していく感情の老化を放置しておけば、あっという間に不機嫌でやる気のない老人になってしまう。いくらお金があったとしても、灰色の毎日が延々と続くのはつらすぎるだろう。

 だからこそ、思秋期に差し掛かったら「感情の老化防止」を意識した生活を送ってほしい。

 私たちが目指すのは、衰退した超高齢社会ではなく、若々しい超高齢社会なのだから。