4月号作家・KDDI総合研究所リサーチフェロー 小林雅一 Kobayashi Masakazu病気を治すため「遺伝子を手術する時代」が間近に (1/2) |AERA dot. (アエラドット)

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4月号
作家・KDDI総合研究所リサーチフェロー 小林雅一 Kobayashi Masakazu
病気を治すため「遺伝子を手術する時代」が間近に

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 今、生命科学の分野で史上空前の技術革命が起きようとしています。それは「ゲノム編集」と呼ばれる超先端バイオ技術です。この技術を使うと、私達人類を含む、あらゆる動植物の「ゲノム(全遺伝子)」を自由自在に書き換えられます。

 たとえば私達人間は(そのDNAの内部に)全部で2万個余りの遺伝子を持っています。ゲノム編集によって、これら全ての遺伝子をピンポイントで正確に改変できるのです。これが私達の暮らしや社会に、どれほど大きなインパクトをもたらすかは、ちょっと想像するだけでも容易にお分かり頂けると思います。

 まず思い浮かぶのは医療への応用です。がんや糖尿病をはじめ、私達現代人を苦しめる様々な病気は(もちろん日頃の生活習慣や環境面も影響していますが)、何らかの遺伝子変異(異常)が大きな原因と考えられています。ゲノム編集を使うと、これら病気の原因遺伝子を直接修正して、治療することができます。

 つまり従来の医療が「患者の身体を手術する」方法であったのに対し、これからのゲノム編集を使った医療では「患者の遺伝子(DNA)を手術する」方向へと、180度の転換を遂げるのです。

 こういう話を聞くと、読者の皆さんは「確かに凄いが、それが実用化されるのは遠い未来のことだろう」と思われるかもしれません。しかし実際のところ、「ゲノム編集」医療は既に始まっているのです。

 たとえば英ロンドンのグレート・オーモンド・ストリート病院では2015年、急性白血病で危篤に陥った小児患者が、ゲノム編集を応用した「CAR-T」と呼ばれる免疫療法によって一命を取り止めました。

 これと同様の臨床研究は2016年以降、中国で何度も実施されました。

 また米国でも2017年、サンガモ・セラピューティクスという先端医療研究所で「ムコ多糖症」と呼ばれる重篤な代謝疾患を、ゲノム編集で治療する臨床研究が始まりました。

 さらに今年、米ペンシルベニア大学で、(全部で3種類あるゲノム編集技術のうち、最新にして最強の技術である)「クリスパー」を導入した新型治療法を、骨髄腫や皮膚がん、肉腫などの患者に適用する予定です。


(更新 2018/4/ 2 )


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