そこでまず、時折、職場や趣味のサークルといったコミュニティで見かける、「やたらと仲がいい既婚者同士の組み合わせ」がいたら、その話を聞かせてもらいたい。可能であれば、その彼・彼女をさりげない形で紹介して欲しいと友人、知人はもちろん、信頼の置けるネタ元にも頼んだ。

 一般的には人目を忍んで行う不倫と違い、人目を憚(はばか)らず既婚者同士で親しくしているのは、そこに男女の関係がないからだろうと踏んだからだ。

 そうすると意外にも「セカンド・パートナー」とまでいえるかどうかわからないがと前置きしたうえで、そうした存在の異性が実は自分にもいるという声も聞こえてきた。
 そのうちに、気になっていた既婚者同士の「組み合わせ」やその一方の当事者をごく自然な形で紹介してもらった。

 時間をかけて、彼・彼女らと信頼関係を築き、彼・彼女のほうからその関係を話すのを、ただひたすら待った。

 なかには“空振り”もあった。実は不倫関係であったり、ただ「話しやすい」から一緒にいるだけで、そこには何の感情もないというケースも少なからずあったものだ。
 そうして会った人たちから、いくつかヒントももらった。不倫経験者はなかなかその癖が抜けない、だから不倫に失敗した人、また、かならずしも「貫通行為」を目的としない特殊性癖の人たちにも話を聞くといい――等々。

 IT時代だ。こちらはW不倫経験者や特殊性癖の人たちのWEBサイトやブログを熟読し、コメントをつけ、頻繁なメールでのやり取りの末、約70人の人に会えた。

 そもそも彼・彼女らは、インターネット上にみずからの不倫歴や性癖を綴っているのだ。「話したくて仕方がない」人たちである。初対面時、「本名を名乗らなくていい」「人目のある喫茶店で」といえば大抵は取材に応じてくれた。

 本名やその人の持つ背景は、親しくなれば後からいくらでも聞ける。まずは会って話を聞かなければならない。

 気がつけば7年間でのべ105人の人と会っていた。

 溜まっていく一方だった断片を組み合わせて見えてきたのが、現代夫婦が抱える「心の闇」だ。話を聞かせてくれた彼・彼女のお陰でそれが明らかになる。是非、ご覧あれ。