サスペンスドラマや刑事ドラマでは、事件が起こって最初の方に登場する、いかにも悪そうな人は犯人じゃない。だいたい、一番関係なさそうな意外な人が犯人だったりすることが多い。

 人の身体でも似たようなことが起こっています。

 頭痛がする、肩が凝る、腰が痛い。その原因は意外なところに存在しています。

 痛みや痺れなど身体に表れる症状は、そのほとんどが日常生活におけるあなたの身体の使い方のクセや姿勢が様々な代償(かばう行為)を重ねた結果なのです。

 ギックリ腰のような突然起こる強い症状も、きっかけは顔を洗おうと前屈みになっただけだが、それが起こる原因は日々の身体の使い方のしわ寄せなのです。

 特にデスクワークや車や電車移動など座ることが多い現代人の場合、尾骨を潰しているのが当たり前になっていて腰痛はじめ様々な不調の原因になっています。サスペンスドラマでいうなら、最初に目がいく骨盤や背骨は犯人ではなく、控えめであまり注目されていない尾骨こそが実は黒幕であることが多いのです。

 私の院に来院される患者さんは腰痛や肩凝り、頭痛、スポーツ障害、うつ、自律神経失調症、不妊症など様々な方がいらっしゃいますが、9割以上の人の尾骨が歪んでいました。尾骨に歪みがなく真っ直ぐきれいだった人は1割もいません。

「たかが尾骨くらいでそんな影響ないでしょ」

 と思うかもしれませんが、尾骨は様々な不調の原因になりやすいのです。

 その理由として、人の身体に限らず、構造物は「中心から外」かつ「下から上」に向かって作用していくので、中心や大もとが壊れていると、その影響はやがて外に広がっていき、一見関係のないところまで壊れていきます。

 特に背骨は生きていくために必要な動作の中心であり骨盤は基礎になっているのです。ですから、実際に数多くの背骨や骨盤をテーマにした健康本やエクササイズが出ていますが、その背骨の一番根っこにある尾骨をテーマにしたものはあまり見たことがありません。

 それは尾骨が一般的にはシッポの名残、つまり「退化した骨」という認識をされていて、あまり重要視されていないからです。

 しかし、それは大きな誤解です。構造の理屈で考えるのであれば、身体の中心にある背骨のその一番根っこにあたる尾骨は絶対に無視できない存在なのです。

 背骨は尾骨の傾きに合わせてバランスをとっています。つまり身体の軸であり柱となる背骨に「あっちに傾け、こっちに傾け」と指示を出しているのは尾骨なのです。

 そこを無視したまま背骨や骨盤をいくら整えてみたところで、一時的には良くなっても尾骨の傾きに合わせて背骨は再び傾いてしまうのです。

 本書では、その尾骨のために誰でも簡単に出来るセルフケアを伝えています。

 近年、うつや自律神経失調症はじめ、様々な不調の背景に、身体だけでなく心の問題が影響していることが多く、なかでも自己重要感の低さというのが無視できないと感じています。これは動物的感覚の低下とも言えます。

 少し視点を変えると、人間は首から上に行くほど人間的で骨盤から下に行くほど動物的という見方が出来ます。

 首から上は口があり脳もあります。物事を考え、創造し、言葉を話す。とても「人間的」な機能です。反対に骨盤から下は排泄や性行動といった本能的で「動物的」な機能だと思います。

 エネルギーが下に行き過ぎてしまうと、動物的で考えなしに動いてしまう。衝動的な暴力や性犯罪などは本能的でエネルギーが下に行き過ぎて、社会性や倫理観といった人間的な部分が機能低下しているのだと考えられます。

 反対にエネルギーが上に行き過ぎると、人間的ではあるけれど、動物的感覚が薄れてしまう。

 だから10時間以上も座りっぱなしで動かなくてもいられるし、自分を犠牲にしてでも社会性を保とうとする。

 社会性があるから人を思いやったり助け合えるのですが、それに偏り過ぎて動物的感覚があまりに働かないと、自己犠牲が強くなったり自虐的になったりしてしまい、自分の身体を壊してしまうことにもなります。

 シッポの名残と言われ、動物的な部分でもある尾骨を意識することで、時には動物のように自分本位に生きるということを見直していただき、健康で幸せな人生のきっかけになればと思います。