信田さん自ら“母娘問題の総集編”と銘打つ一冊。母娘関係に悩む人、興味がある人は他の何よりもまずこの本を読むことをお勧めします。臨床心理士として、早くからこの問題に取り組んできた信田さん。本書では母娘問題の歴史を繙き、詳細な事例とともに、何が問題かを丁寧に分析し、新たな課題を提示しています。

 悩める娘たちはもちろん、娘に手を焼く母や、オロオロする父親、あるいは孫が心配でたまらない人や、女は勝手なことを言えていいよなと鬱屈した思いを抱えている男性にも、ぜひとも読んでほしい。なんなら一家に一冊常備してもらいたいくらいです。

 信田さんが2008年に上梓した『母が重くてたまらない――墓守娘の嘆き』をきっかけに、母との関係のしんどさを誰にも言えずにいた女性たちが声を上げるようになりました。それを牽引したのは、メディアで働く団塊ジュニア世代の女性たち。たかが親子ゲンカと軽んじられがちな母娘問題に光を当て、世に広めたのです。それは彼女たちが当事者であったからだ、と信田さんはいいます。

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