ECMO(エクモ=体外式膜型人工肺)(竹田医師提供)
ECMO(エクモ=体外式膜型人工肺)(竹田医師提供)

 新型コロナウイルスの感染について、政府の専門家会議は、今後、患者が爆発的に増える恐れもあると指摘した。欧州では急激に感染が拡大し、世界での死者は1万人を超えた。世界の研究機関が治療薬の開発を急いではいるが、現状は市販薬をめぐる見解で大きな騒ぎになっている。

「新型コロナウイルスでイブプロフェンなどの抗炎症薬を服用すると、感染を悪化させる可能性がある」

 フランスのベラン保健相が、3月14日にツイッターでつぶやいた内容が物議を醸している。

 世界保健機関(WHO)は17日、「高い死亡率につながる証拠がない。調査を進めている」と言及。ところが、その後、「使用を推奨していない」、さらに「控えることを求める勧告はしない」と二転三転した。

 イブプロフェンの使用については、医学雑誌のランセットにも、「コロナウイルスの感染が増幅する」とする記事が掲載されている。

 イブプロフェンとはどんな薬なのか。呼吸器の専門医、池袋大谷クリニックの大谷義夫医師は、こう説明する。

「ロキソニンやボルタレンなどと同じ、非ステロイド系抗炎症薬というタイプの薬で、痛みをとったり熱を下げたりする作用があります。医療機関で処方されるほか、市販薬として薬局やドラッグストアでも扱っています」

 今回のWHOの発言について、NPO法人「医薬ビジランスセンター(薬のチェック)」理事長の浜六郎医師は、こう指摘する。

「ウイルスは熱に弱いので、解熱するとウイルスは再増殖します。特に非ステロイド系抗炎症剤は免疫も落とすので、感染症が重症化して死亡率が高まります。決して使ってはいけません。WHOはイブプロフェンの使用制限を撤回しましたが、多数の疫学調査や感染動物を用いた実験で死亡率を高めるという確実な証拠があるのに、そのことに触れていない。(仏保健相が推奨する)アセトアミノフェンでも平熱まで下げると、感染症を悪化させます」

 一方、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、

「WHOは研究機関ではなく行政機関。今回の薬の使用についての発言は、一線を越えている。イブプロフェンがコロナ感染を増幅するのは仮説に過ぎず、記事を掲載したランセットにも違和感を覚える」

 と、今回の両者の言動に対しては批判的だ。

 実際の医療現場ではどうなのだろうか。

 新型コロナに限らず、風邪などの一般的な呼吸器感染症では、非ステロイド系抗炎症薬を持続的に服用することはお勧めしないと、大谷医師。その理由についてこう述べる。

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