室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、国会の焦点が「桜を見る会」疑惑から新型肺炎問題に移る現状に皮肉を込める。

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 家の近くの薬局にマスクとアルコール消毒液を買いにいったら、それらはほとんど置かれてなかった。アルコール消毒液がかろうじて1本だけ残っていた。

 なぜマスクとアルコール消毒液が必要だと考えたかといえば、テレビで新型コロナウイルスについての報道を毎日見ているからで、ほかの人もそうなんだろう。

 首相官邸のホームページには「新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~」というのが載っていて、そこにはこう書かれている。(1)手洗い(2)普段の健康管理(3)適度な湿度を保つ、などだ。

 そして、国内で症状が現れた場合は、マスクを着用するなどし、あらかじめ医療機関に連絡の上、速やかに受診するように、とのこと。

 ま、その通りなんだろう。で、これらについては、国民の多くに知らせなきゃならないことであることも理解できる。だから、テレビでは毎日、毎日、コロナについて流しているんだろう。

 しかし、1、2回見逃してしまった人のためといっても、連日にわたり、朝から晩までずっとそればかりだ。

 武漢から帰国する人たちの飛行機の中継は、どんな意味があるのかわからん。テレビの端っこに「武漢から第3便帰国何人」とテロップ入れるだけでいいじゃん。

 原発事故のときは「国民がパニックになってはいけない」と報道規制があったが、今回はパニックになってもいいのかしら。そういや、北朝鮮がミサイルを放つXデーとやらも、相当、パニックを煽(あお)っていたわい。

 結局、どう報道されるかは忖度(そんたく)とやらで、すべて政府の都合なのかもしれない。そんな風にあたしは思えてならない。

 国会が開かれ、政府側の答弁は(桜についても、IRについても)聞くに堪えない酷(ひど)いものであるが、ほとんどそれについては流れない。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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