送り出し機関の教育施設で研修するベトナム人技能実習生(ハノイの教育機関で)
送り出し機関の教育施設で研修するベトナム人技能実習生(ハノイの教育機関で)
面接の練習を受けるベトナム人技能実習生(ハノイの教育機関で)
面接の練習を受けるベトナム人技能実習生(ハノイの教育機関で)
介護留学のため日本語を勉強するフィリピン人(セブ島の語学学校で)
介護留学のため日本語を勉強するフィリピン人(セブ島の語学学校で)
ハノイ市内
ハノイ市内
新在留資格「特定技能」開始から半年。交付者数は初年度想定の3%未満 (週刊朝日2019年11月29日号より)
新在留資格「特定技能」開始から半年。交付者数は初年度想定の3%未満 (週刊朝日2019年11月29日号より)

 安倍政権の肝いりで、採決を強行した改正出入国管理法(入管法)に基づき、4月に新設された在留資格「特定技能」。人手不足を解消するため外国人に単純労働を認める就労ビザだが、取得者は初年度想定の3%未満。何が起こっているのか。

【表で見る】業種別 受け入れ見込み数や申請者数、交付者数など

 求人誌に広告を出しても、切羽詰まった日本人の若者から「日払いでお金がもらえますか」と電話があっただけ。ハローワークに求人票を出しても、応募者は50代以上の未経験者ばかり。そんな時、誘いがあった。

「4月に申請を出せば、5月には人材を送れます」

 関東の建設会社社長(40代)は2月、知人を介して出会った人材紹介会社の提案に二つ返事で飛びついた。

 4月に新設された在留資格「特定技能」で、元技能実習生のカンボジア人2人と、ベトナム人1人を送り込めるという提案だった。建設会社社長は3人分の採用コンサルティング料として180万円を支払った。しかし、待てど暮らせど人材はやってこない。

「国の制度が不十分で、まだまだ時間がかかります」

 人材紹介会社の担当者はそう言い訳するばかりだ。8月に「技能実習生をとりますか?」と代案を示されたところで建設会社社長の不信感は頂点に達し、キャンセルと返金を申し出た。

 しかし、人材紹介会社は「国の制度の問題で時間はかかっているが、採用しないわけではない。キャンセルの場合は4割の返金しか認めない」と、言い張っているという。

 単純労働分野で働く外国人労働者の在留資格を14業種で認め、5年で最大34万5150人の受け入れを目指す特定技能。

 4月の制度開始から半年が経つが、受け入れがまったく進まない。ビザが交付されたのは732人で、初年度想定の3%に満たない。衆院17時間15分、参院20時間45分。改正入管法は国の将来を左右する重要法案でありながら、拙速審議で昨年末の臨時国会で成立させた結果、冒頭のような混乱が起きている。自民党関係者が話す。

「参院選を睨み、人手不足に悩む財界に恩を売るため、日程ありきで決めた法律。新制度を作ったからといって、諸外国が『はい、わかりました』とすぐに受け入れてくれるわけではない」

 政府は当面、特定技能での受け入れを9カ国(ベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴル)からとしているが、送り出し国の法令、手続きが定まっているのは現時点でカンボジア、インドネシア、ネパールの3カ国のみ。特定技能外国人は日本語と業種別の技能試験に合格する必要があるが、10月までに日本語試験は4カ国、技能試験は6カ国で開催されたに過ぎず、開催回数も少ない。技能試験が実施されていない業種も多く、日本企業は人を受け入れたくても、受け入れられない状況が続く。

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