ジャーナリストの田原総一朗氏は、相次ぐ閣僚の辞任、失言に安倍内閣の緊張感のなさを指摘する。
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“政治とカネ”を巡る問題で、菅原一秀経済産業相と、河井克行法相が相次いで辞任した。
菅原氏は、選挙区の有権者に贈答品を配っていた疑惑で野党から集中砲火を浴びていたのだが、その最中に香典問題が浮上したのだ。そして河井氏は、妻である案里氏の陣営が、参院選で運動員に、定められた金額の2倍の報酬を支払っていたことが露呈したのである。
第2次安倍内閣になってから、10人の閣僚が辞任している。
さらに萩生田光一文部科学相の「身の丈に合わせて」というとんでもない失言が出て、このために2020年度から活用される予定だった英語の民間試験が導入延期となった。河野太郎防衛相の失言もあった。
こうした、閣僚の相次ぐ辞任や失言は、明らかに安倍内閣が緊張感を失い、気が緩んでいるためである。7年間と長く内閣が続きすぎたためであろう。通常ならば、森友・加計疑惑などで内閣が変わっているはずである。国民の70%以上が問題だと捉えていながら、なぜ安倍内閣が続いてしまったのか。
一つは、野党が弱すぎるからである。12年から国政選挙が6回行われ、すべて安倍自民党が勝っている。なぜなのか。
国民の多くは安倍首相の経済政策、いわゆるアベノミクスが成功している、とは捉えていない。安倍首相は、日銀の黒田総裁と組んで、異次元の金融緩和を敢行した。円をどんどん発行すれば需要が拡大すると考えたのである。だが、需要は拡大せず、負債ばかりが増えた。先進国の中で負債が最も多くなってしまっている。
だから、選挙のたびに、私は野党の代表たちに強く求めていた。
「国民はアベノミクスの批判など聞きたくはない。あなたがたの党が政権を奪取したら、どのような経済政策を行うのか。アベノミクスの対案を示してほしい」と。
だが、どの野党からも対案らしきものは示されなかった。