室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、中国、韓国、北朝鮮のトンデモ映像を流すテレビ局の思惑を考えてしまうという。

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 8月17日、久米宏さんがご自身のラジオ『久米宏 ラジオなんですけど』で、反韓一色の今のテレビに苦言を呈した。

「テレビが反韓国キャンペーンをやっているような匂いが、僕、少しだけするんです」

 だよね。少しなんてもんじゃない。もう行きつくとこまで行ってしまった感じ。

 具体的にいえば10年くらい前から、中国、韓国、北朝鮮のトンデモ映像が流れるようになった。

 手抜き工事で崩れるビルとか、汚染した川、ルールを守らない人々の映像だ。 それを観てコメンテーターたちがニヤリと嗤(わら)う。

 あたしはそれを嫌だな、と思っていた。この国は、よその国の発展の遅れを嗤うことができるのか? この国だってちょっと前に通ってきた道だ。

 この国がそれを欧米のテレビなどにやられたらどう思う? てか、やられていたでしょ。昔、向こうのテレビや映画に出てくる日本人ってかなりバカにされていた。カメラを首にかけ、ヘコヘコなんにでも頭を下げる日本人みたいな。

 たぶん、お金を持ち始めた日本人に対し、自分たちより下のくせになんだよ的な感情があったんだと思う。

 今はスマートフォンなどで簡単に映像が撮れるから、その国のイケナイ映像を入手できる。けど、それを日本でわざわざ流すことにどんな意味があるのだろう。

 それらはニュースではない。だとしたら娯楽? 趣味が悪い。

 それを一つ流すことによって、我々に報じられるべきニュースが一つ消える。文書改ざん、事故を起こした福島第一原発への対処、貧困者増加……。この国は問題だらけだというのに。

 久米さんは、

「いま韓国を叩くとね、数字が上がるんじゃないかっていうね」

 といっている。でなきゃ、連日こんなにやらない、と。それもあるだろう。けど、あたしは無邪気に数字を追っているだけではない気がする。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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