事件が起きた熊沢容疑者の自宅 (c)朝日新聞社
事件が起きた熊沢容疑者の自宅 (c)朝日新聞社

 元農林水産事務次官の沢英昭容疑者(76)が東京都練馬区の自宅で長男の英一郎さん(44)を刺殺した事件で、動機の一つには壮絶な家庭内暴力あったことがわかった。

 英一郎さんが実家に戻りたいと電話したのは5月25日だった。その翌日26日から、家庭内暴力がはじまっていた。

「熊沢容疑者や母親は、アザができるほど殴られた。その際、『俺の人生何だったんだ、どうなってんだ』となどと言っていたといい、熊沢容疑者と妻は二階の部屋に閉じこもるようになった。英一郎さんは一階でパソコンやゲームをして過ごしていた。その後も断続的に家庭内暴力が続き、ライターの火を押し付けるほどエスカレート。ついに熊沢容疑者は『今度暴力を振るったら、こちらがやられてしまう。もう刺すしかない』などと妻に話していたようだ。そこへ川崎の事件もあって凶行に及んだようだ」(捜査関係者)

 熊沢容疑者が農水省時代、英一郎さんを含めて都内の公務員宿舎に住んでいた。

「子供さんが小さい時は何度か、顔を合わせましたよ。子煩悩でごく普通のご家庭に見えました。英一郎さんは勉強がよくできて、駒場東邦に中学から行っていたと聞きました」と農水省時代の同僚は話す。

 進学後も成績は優秀だったという英一郎さん。だが、中学2年生ころから、イジメが激しくなり、クラスでは孤立していたという。そのイジメは壮絶だったと同級生はこう話す。

「筆箱で頭を叩かれたり、シャーペンで背中や手を刺されたり、塩を鼻に押し付けられたりされていた。やられても、ほとんどやり返すことはなかった。消しゴムを顔面にすごい勢いで投げつけられ、目のあたりに命中したときはブチ切れて、体操服だったかな、振り回してクラスのヤツに飛びかかることがあった。けど、ケンカが弱いのですぐにボコボコにされていた。常にイジメの対象だったように思う。高校でもそんな感じでしたね」

 どうしてそこまでイジメられたのか。先の同級生はこう話す。

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味方には優しいが敵は徹底的に痛めつける