ネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)の空中散布に反対する住民ら (c)朝日新聞社
ネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)の空中散布に反対する住民ら (c)朝日新聞社
ネオニコチノイド系農薬の出荷量 (週刊朝日 2019年3月15日号より)
ネオニコチノイド系農薬の出荷量 (週刊朝日 2019年3月15日号より)

 発達障害の原因として農薬との関係が注目されている。1990年ごろから急速に広まったネオニコチノイド系農薬が、子どもの脳の発達に悪影響を及ぼす見解が世界で報告されているのだ。そんな恐ろしいことが指摘されているにもかかわらず、日本の対策は遅れている。作家・ジャーナリストの青沼陽一郎氏がレポートする。

【グラフ】ネオニコチノイド系農薬の出荷量はこの10年でこんなに増えた!

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 ネオニコチノイド系は、農業にだけ使われるものではない。松枯れの防止剤としても利用されている。家庭用の殺虫剤やシロアリの駆除剤、さらには住宅建材の中などにも使われている。

 学術誌に発表された論文によると、国内での12~13年のサンプル調査で、3歳児(223人)の尿中に有機リン系農薬の代謝物が100%、ネオニコチノイド系農薬の代謝物が79.8%の割合で検出されている。

 国内における「ネオニコチノイド系農薬の出荷量」を見ると、使用が増えていることがわかる。発達障害の児童生徒数の推移と比べると、相関関係があるのではないかと疑いたくなる。

 子どもへの悪影響をはじめ、様々な環境問題につながるとして、EUはネオニコチノイド系の3種類の農薬の屋外使用を、昨年禁止した。もともとはオランダが14年に、フランスが16年に禁止を決めている。その他、韓国も14年に、ブラジルは15年、台湾は16年に、それぞれ使用を禁止している。

 ところが、日本に目を向けると、禁止どころか、ここ数年はネオニコチノイド系農薬の食品の残留基準をむしろ緩和しているのだ。

 イチゴの日本の残留基準(アセタミプリド)は3ppmで、これはEUの60倍、米国の5倍の緩い基準にあたる。ブドウの5ppmは、EUの10倍、米国の14倍。トマトの2ppmはEUの4倍、米国の10倍、お茶の30ppmにいたっては、なんとEUの600倍の基準になる。

 安倍政権は「攻めの農業」を掲げ、農林水産物や食品の輸出に力を入れる。昨年の輸出額は前年比で12.4%増の9068億円となり、6年連続の増加で過去最高額を更新している。今年は政権が目標とする1兆円の達成を目指す。

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