室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、安倍晋三首相の意のままに進む国の状況に危機感を募らせる。

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 ラジオで一緒に仕事をしている経済学者の金子勝先生が怒っていた。いいや、先生は現政権のやり方にかなり前から怒り沸騰なわけで、怒りを通り越し、半笑いの呆れ顔だった。

「こんなんで、俺ら、いったいどうやって仕事していったらいいのよ」と。

 厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正問題が発覚した。障害者雇用や裁量労働制のデータ、外国人技能実習生の実態調査などもデタラメであった。1月25日、野党の追及で明らかになったが、2018年、実質賃金が上がっているってのも嘘だった。GDPも怪しいという噂。

 金子先生もぼやきたくなるだろう。国が出してくる資料やデータはデタラメばかりで、なにを根拠に学術研究や未来予想をすればいいの?

 先生のぼやきを聞いて、あたしはいった。

「もうこうなったら、預言者になるしかない。自分のシックスセンスを信じるんだ!」

「んじゃ、これからは水晶玉でも持ち歩いちゃう? 意見を求められたら水晶玉を見ながら『こんなん出ました!』といってから答える」

 あたしたちは笑った。笑い事じゃないんだけれど。

 どうなっているの、この国は。この国の未来を考えるとき、知識人たちの、適切な判断や助言はいらないってか? すべて、安倍首相のやりたいようにやるからいいって? 大切なことは、安倍首相のレガシー作り。それとお仲間へいい顔をしたいから、その優遇。

 とんだ独裁国家だ。マジでこの国、ぶっ壊れそう。

 安倍首相はアベノミクスは成功したと胸を張っていい張る。すげぇよな。経済成長は進まず、財政再建は目標期限を先送りしたのに。

 官僚は、なぜ安倍首相の嘘に付き合うんだろう。忖度なのか命令なのかはわからないが、学歴エリートの彼らが、ついうっかりとは考えにくい。

 権力の監視という使命を忘れ、政府の発表をただ垂れ流すマスコミも(2018年、記録的な賃金上昇をうたっておった)、おかしい。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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