スマホ漬けの生活は、子どもの成長に伴いどのような影響を及ぼしていくのだろうか。

 興味深いデータがある。

 仙台市と東北大学の加齢医学研究所は、2013年から毎年7万人を超える児童と生徒の生活習慣と学力に関する調査を行っている。

「市の標準学力検査と生活、学習状況調査などを基に分析しました。一般的に、自宅での学習時間が成績に比例するはずですね。しかし、自宅でどれほど長い時間勉強しても、スマホを1時間以上使う子どもは、使用度に比例して成績が下がる結果が出ました」

 研究所長で「脳トレ」でも有名な同大教授の川島隆太氏はそう語る。

 仙台市立の中学校に通う約2万2400人の学力検査の平均点と平日のスマホ使用時間の関係を見ると、スマホを4時間以上使う生徒のケースはさらに深刻な状態だ。

「数学を例に見ましょう。スマホを全く使わず、かつ30分未満しか勉強しない子どもよりも点数が低くなっています。全く勉強せずに数学の試験を受けた場合の平均点は62点を下回っている。自宅で2時間も勉強して知識や記憶が増えたはずなのに、自宅学習の分はおろか、学校で学んだ分すら相殺されてしまっているのです」(川島教授)

 スマホが広く普及し始めたのがこの5年ほどのことだ。そのため、スマホが脳や身体機能に与える影響についてのしっかりとした検証はない。それでも、スマホを使うことで学習に悪影響を与える「何か」が子どもの脳に生じた可能性があるのでは、と川島教授は推察する。

 では、スマホを使う子どもはすべて成績が下がるのだろうか。不思議なことに、

「全く使用しない子どもよりも1時間未満の子のほうが成績が高い現象が見られました」(川島教授)

 つまり、けじめをつけて、自己コントロールができる子どもは成績が良い。

 東京都練馬区に住む明美さん(仮名)の長男は、都内トップクラスの都立高校3年で、国立大学を目指し、受験勉強をしている。明美さんはおおらかな性格で、長男に「勉強しなさい」と言ったことがない。

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