室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
(c)小田原ドラゴン
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 日本のメダル獲得に沸いた平昌五輪。作家・室井佑月氏は、その裏で注目されなかった安倍晋三首相の国会答弁に疑問を呈する。

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 各種報道によると、安倍首相は2月17日、フィギュアスケート羽生結弦選手に電話をして、

「困難を乗り越え、多くの人に勇気を与えた」

 と祝福したらしい。

 羽生選手は、

「今まで頑張ってきたことが報われた」

 と応じたそうだ。

 これさ、バッチリカメラがまわっているところで行われているんだよね。

 首相官邸のSNSにも、羽生選手と安倍首相の2014年のツーショット写真を載せている。羽生選手が安倍首相に金メダルを渡すシーン。

 たしかに、怪我を乗り越え五輪連覇した羽生選手は素晴らしい。

 でも、なんで、そこに安倍首相がしゃしゃり出てくるんだろう。

 五輪憲章によると、オリンピックは、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではないとされている。オリンピックでの栄誉は、あくまでも選手たちのものだ。そこに国家を絡めちゃダメなのよ。

 この国のトップである安倍首相がしゃしゃり出てきて大喜びするところを大々的に報道するって、五輪憲章から外れておる。

 羽生選手は素晴らしい。だけど、羽生選手が日本人だからといって、日本のトップである安倍首相も素晴らしいとはならない。

 そこを混同した報道の仕方。この国は後進国みたいだよ。そんなことやりそうなのは、北朝鮮くらいのもんだもの。ひょっとしてこれを2020年の東京オリンピックまでつづけるの?

 国会での答弁の酷(ひど)さなどをガン無視して。

 とうとう安倍首相は14日の国会で、

「(専守防衛は)純粋に防衛戦略として考えれば、大変厳しい」

 と述べた。

「(専守防衛は)相手からの第一撃を事実上甘受し、国土が戦場になりかねないものだ」

 そして、ミサイル技術の進展で命中精度が高まっているとし、

「攻撃を受ければ回避するのは難しく、先に攻撃したほうが圧倒的に有利になっているのが現実だ」

 といった。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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