そのまま植松容疑者は緊急措置入院となった。入院中に「ヒトラーの思想が降りてきた」(ヒトラーは命に優劣をつける優生思想から心身障害者約20万人を殺害したとされる)などと発言していたが、3月2日に退院。園は津久井署の助言を受け、4月下旬に防犯カメラ16台を設置した。職員たちにとって植松容疑者は“警戒対象”だったのだ。

 植松容疑者は事件後の午前3時ごろ、現場から7キロほど離れた津久井署に出頭。殺人未遂と建造物侵入の容疑で緊急逮捕された。持っていたカバンには、血のついた包丁やナイフなど3本の刃物が入っていた。のちに現場から2本の包丁が見つかり、凶器の刃物は計5本とされている。県警は殺人容疑に切り替えて捜査を進めている。

 これまでの調べなどによると、植松容疑者は26日未明、やまゆり園の正門から100メートルほど離れた路上に黒いセダンを駐車。トランクから袋のようなものを取り出し、園に向かった。

 やまゆり園は、2階建ての東棟と西棟がある。各階が二つのエリアに分かれ、「はなホーム」「つばさホーム」などと名付けられ、1~2人部屋が並ぶ。当時は157人が就寝中だった。

 植松容疑者は東棟1階の居室の窓をハンマーでたたき割って侵入。東棟から西棟へ移動しながら、一室一室ドアを開けては、寝ている入所者の首や胸を次々と刺していった。

 異常事態に気づき、制止しようとする職員たちを刃物の柄の部分で殴り、プラスチック製の結束バンドで腕や指を縛り、手すりにつないで身動きできないようにした。

 死亡した19人は19~70歳。女性が10人、男性が9人だった。いずれも首や胸、背中などに複数の刺し傷を受けていた。このうち17人の死因が首を刺されたことによる失血死だった。

 植松容疑者が現場を離れた後の午前2時45分、職員が110番通報している。その5分後、植松容疑者はツイッターにこう書き込んだ。

「世界が平和になりますように。beautiful Japan!!!!!!」

週刊朝日  2016年8月12日号