知的センスなしは非モテだった…(※イメージ)
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 モデルの知花(ちばな)くららさんが、「朝日歌壇」の選者である永田和宏先生に短歌を詠む秘訣を聞く本誌連載『知花くららの「教えて!永田先生」』。今回は歌を贈りあう意義を聞いた。

*  *  *

知花:先生、今月は贈答歌について教えてください。

永田:そうか、いよいよ誰か贈りたい人ができたんだ(笑)。贈答歌というのは自分の気持ちを歌にして相手に贈る。それに対する返歌を相手からも贈り返してもらうという、私的なやりとりの歌ですね。古典和歌の時代、貴族たちは自分の思いを相手に伝えるとき、文章じゃなくて必ず歌で伝えました。特に恋の思いは。

知花:へ~、必ず歌で……。

永田:あの長い『源氏物語』も、源氏の気持ちを説明した文章はまったくないの。

知花:気持ちは全部、歌で伝えるものだから?

永田:そう。たとえば「夕顔の巻」でも、お互いの顔をハッキリ見ないまま、源氏は夕顔から香を焚き込めた扇子に書かれた歌をもらう。「心あてにそれかとぞ見る白露の光添へたる夕顔の花」。当て推量ですが、あなたは夕顔の花のような源氏の君ではないでしょうか、と。それに興味を引かれた源氏が「寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔」。近寄って見もしないで私だとわかるはずもない。つまり、確認しに出ておいでよと返すんですね。そんなやりとりで親しくなるわけ。

知花:さすが源氏ですね。

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