天王寺の進路指導主事、武井節子教諭は話す。

「10校合同で海外研修に行ったり、京大のキャンパスガイドを実施したりするなど、交流は深い。府立校同士、みんなで頑張っていこうという雰囲気があります」

 県立が強いのが福岡県だ。県立高校入試に学区制が採用されているため、優秀な生徒が県内各地の有力校に在籍している。福岡市内にあってそれぞれ学区が異なる修猷館、福岡、筑紫丘の3校は、部活動などでも昔からライバル関係にある。

 修猷館の小山潤教頭は、創立順に、修猷館を「長男」、福岡を「次男」、筑紫丘を「三男」に例え、大学進学志向の差を解説する。

「地元を出て一旗揚げようというのが長男。地元を大切にするのが次男で、九大を意識しています。いい意味で要領がいいのが三男で、着実に進学実績を上げています」

 3校とも九大合格者は多いが、長男・修猷館は長年にわたり東大合格者が一定数輩出する。浪人に寛容な校風もあり、現役進学にこだわらず、第1志望を諦めずに目指す生徒も多い。今年は東大に8人、京大に10人が合格した。

「今年の3年生は力のある集団ですが、その割には東大、京大の数が出なかった印象はあります。しかし、実績の変化に一喜一憂しません。それが伝統校です」(小山教頭)

 とはいえ、次男、三男の結果も気にかかるのでは?

「それぞれ風土が違うのであまり意識していません。それより都立日比谷など、実績を出している遠くの伝統公立校を意識しますね。次男、三男のことはあまり考えない、自分中心な長男なんです(笑)」(同)

 今年、東大8人で修猷館と並んだのが、三男・筑紫丘だ。真海誠司副校長は、

「修猷館は昔から東大志向ですが、本校は長く九大の合格者数が学力のバロメーターになっていました。しかし10年ほど前から『中央にも目を向けよう』と考え方が変わり、近年は、東大に10人以上の合格者が出る年もあります」

 真海副校長も「数で勝った負けたということは考えていない」と言う。

「3校は互いのいいところをまねし合っています。県立3校が伍して切磋琢磨していることにそれぞれの学校がよさを感じていて、地元でも評価されています」

 互いを認め合うよきライバル関係は、地域にも浸透しているようだ。

週刊朝日 2016年4月1日号より抜粋