「FMSだからですよ」

 FMS(Foreign Military Sales)とは「有償軍事援助」と呼ばれ、日米の政府間での防衛装備の調達方法のことだ。日本企業のライセンス生産や、商社を通じて調達する方法もあるが、FMSならば、日本で開発されていない防衛装備や部品を同盟国として、米国から買い付けることができる。政府間の取引なので、コミッションも不要で、信用もおけるとされている。

 だが、問題は多々ある。軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が指摘する。

「もともとアメリカが冷戦のさなか、同盟国の軍事能力を向上させるため無償軍事援助したのが始まりです。その名残があるから、今では買ってもらう立場になっても高姿勢で臨んでくる。兵器の代金や技術訓練の費用なども米国の言い値でしかありません。自国軍より高く売りつけて儲ける制度になっている」

 代金は原則、前払いなのに、米国から提示される価格、納期はあくまで見積もりに過ぎず、都合で変更も可能だ。精算は納入後に行われるが、米国側の事情で途中で契約解除することもでき、取引完了までの道のりは長いのだ。民主党の大野元裕参議院議員が言う。

「政府が武器の購入を決定するまでに、どれほど価格交渉をしているかが問題です。すべて米国から最終計算書が送られてくるまでは、本当に納入されるかどうかもわからない。スペアパーツなども保証されていないので、製造中止と言われれば終わりです」

 つまり、FMSとは米国の主導権で、好き勝手にできる不平等な仕組みなのだ。(今西憲之、本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2016年3月18日号より抜粋