「家族や友人連れで来店し、必ずといっていいほど隣同士の席を希望する。盛大におしゃべりをし、大声で笑う。カルチャーの違いですから、注意するわけにもいきません。他の客の迷惑になるので、年内に中国人専用スペースを設ける予定です」

 たいへんですねえとつい同情したくもなるが、日本人の財布のひもが固くなった今、経営者にとってはうれしい悲鳴、商機到来である。

 銀座にある美容サロン「UNIXキラリトギンザ店」は、インバウンド戦略店舗。中国語や英語に堪能な美容師をそろえ、外国語のメニューも完備した。それが奏功し、「外国人にやさしい店」という評判が口コミで広がり、多い月には20人を超す外国人がスマホや地図を片手に訪れるという。

「中国人のお客には、せっかく来たからとばかりに長髪をばっさり切ったり、『おまかせオーダー』で冒険したりする人が多い。友人同士で、カット中の様子を何度も撮影し合っていますね」(UNIX店長)

 旅行会社「エイチ・アイ・エス」は今年、「KawaiiPlan(カワイイプラン)」と題した美容体験ツアーを売り出した。ネイルサロンや美容院、着付けなどを体験でき、女性観光客の注目を集めているという。

 実際、中国人観光客の間では「日本のサービスは“神レベル”」との声が飛び交っている。

「シャンプーも丁寧。温かいタオルで何度も髪を包んでくれる」「無料で何種類もドリンクを出してくれた」「肩と首、背中のマッサージまでしてくれた」……。こうした感動体験をつづった個人のブログが、新たな観光客の呼び水になっている。

 昨年8月、リクルートライフスタイルが来日経験のあるアジアの女性(中国・台湾・韓国・香港)を対象にした調査で、日本は「美容について憧れる国」のトップだった。同社のホットペッパービューティー主席研究員はこう話す。

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