午後から被告人質問が行われ、弁護側と検察側から2時間以上も質問が続いた。クレジットカードで17万円余りを支払った国民年金の保険料の明細書。その一部に修正テープを貼ってコピーをとり、政務活動費として請求したことを検事から厳しく指摘されても、「わかりません」。明細書を示され、見るように言われても、「覚えていません」。この日、記者がカウントしただけで「覚えていません」「わかりません」「記憶にない」と答えたのは100回以上に上った。

 裁判長が業を煮やしたように、「すぐ答えられる質問だと思います」と諭す場面も。

 公判終了後、野々村被告が向かったのは神戸拘置所だ。在宅起訴から一転、裁判所から勾留状が出され、3月末まで身柄を置かれることになったのだ。

 この報に安堵の表情を浮かべるのは、野々村被告が身を寄せていた大阪市内の実家の近所の住人だ。

「マスコミの人が野々村さんの家に来てインターホンを鳴らすだけで110番通報して大騒ぎする始末ですわ。『マスコミに殴られた』『俺にもしものことがあればどうするんだ』とか叫んでいた。外に出てこないのに、どうして殴られるのか不思議でしたなあ。あまりに意味不明な話に最後はお巡りさんもお手上げの表情でしたわ」

 本誌は、「覚えていません」と繰り返した野々村被告に話を聞けないかと神戸拘置所を訪ねてみた。

 神戸市の北にあり六甲おろしが吹き、寒さから逃れたいと、自白してしまうという逸話があることで有名な神戸拘置所。面会は残念ながら、かなわなかった。極寒の中で、何を思うのか?

(今西憲之)

週刊朝日  2016年2月12日号