「安倍政権はアベノミクスでデフレ脱却を目指し、株価を意識した政策を打ってきた。インフレ型経済では年金資産の目減りを回避し、運用利回りを上げるには、株式運用に重心を移すのは合理的です。だが、なぜ25%なのか、どのようにして決められたのか、運用損が出たときに誰が責任を取るのか、不透明なまま進められてきたのが問題です」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)

 さらに、これまで外部に委託をしていた株式運用を、GPIF内で行う「インハウス運用」ができるように、政府は今国会で法案を提出する見込みだ。そうなると、どうなるのか。埼玉学園大の相沢幸悦教授(金融政策)は嘆く。

「収益性や社会的責任といったポリシーを持って運用をする優秀なファンドマネジャーがいればいいのですが、難しいでしょう。GPIFは昨年から運用のプロを集めていますが、外資系とは給与のケタが違う。優秀な人は集まらないでしょう」

“シロウト”運用に拍車がかかりそうだというのだ。

「株価を引き上げるために、例えばソフトバンクやファーストリテイリングなど日経平均に影響の大きい銘柄を買い足すような政府の介入も容易にできるようになります」(相沢教授)

 一昨年ごろから市場関係者の間では、政府が市場介入をして株価を引き上げる「官製相場」で株高を維持してきた、とささやかれていた。

「市場は自然の流れにまかせないといつかしっぺ返しがきて、アベノミクスは崩壊します」(磯山氏)

 1月28、29日の日銀金融政策決定会合で3度目の黒田バズーカが放たれ、金融緩和が決まるのではとの見方が広がる。

「追加緩和で株価が引き上げられると期待されていますが、日銀の神通力も通用しなくなりつつあります。中国株や原油安など海外の状況に株価は左右されます」(前出の斎藤氏)

 将来、年金が消えてなくならないよう、国民はGPIFのギャンブル投資の損得勘定をしっかり見定めるべきだろう。

(本誌・長倉克枝)

週刊朝日  2016年2月5日号