献金再開は社会貢献?
献金再開は社会貢献?

 大手銀行は政治献金を18年ぶりに再開しようと検討している。みずほ、三菱東京UFJ、三井住友の3メガバンクをはじめ、全国の銀行が加盟する全国銀行協会(全銀協)の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は10月の記者会見で、献金は経団連からの呼びかけに応えるものだと語った。再開は「各行が独自に判断する」というが、国民の理解は得られそうにない。

 今、1万円を3メガバンクの定期預金(スーパー定期)に1年間預けても、利子はわずか2.5円だ(12月1日現在)。金利0.025%と、歴史的な超低金利が続いている。

 全銀協の佐藤会長は献金再開について「企業の社会貢献の一環」としているが、一般国民が低金利に苦しんでいるのだから、社会貢献を口にするなら、サービス業としてはまず、金利を上げて預金者に還元すべきとの声は多い。

 3メガバンクの広報担当者は政治献金再開について「まだ何も決めていない」と判で押したように答える。献金がどうして社会貢献になるのかについても聞いた。

「議会制民主主義は、民間との幅広いコミュニケーションを通じて、民意を吸い上げ、政策を立案・実行するものです。政策の立案・実行にかかるコストについて民間も応分の負担をすることが期待されているため」(みずほフィナンシャルグループコーポレート・コミュニケーション部広報室)

「経団連が、企業の社会貢献の一環として重要性を有するとの見解を示していると理解しております」(三井住友銀行広報部)

 みずほの言う「民主主義のコスト」は一見、理屈に合っているようだが、実際のところ献金先は自民党だけだ。ある銀行関係者は「経団連からは『政治との連携強化に関する見解』に基づき呼びかけがあり、自民党からは国民政治協会を通じて要請があった」と話す。

 国民政治協会は自民党の政治資金団体で、献金の窓口になっている団体。銀行業界は電力や建設業界と並んで、大口の政治献金提供者だった。その銀行業界が献金自粛に追い込まれたのは、1990年代の金融危機のなか、銀行の経営を支えるために巨額の公的資金が投入されたからだ。国から税金を受け取って政治献金すれば、税金が政治家や政党に還流することになるからである。

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