文化庁は文部科学省の外局だが、名称変更当時、そのトップだった下村博文前文科相は大臣に就任した12年12月以降の約2年半の間に、家庭連合と関係が深い世界日報社の月刊誌「ビューポイント」に3回にわたってインタビュー記事が掲載されている。同誌には石破茂地方創生相の座談会、林芳正前農相などのインタビューも掲載されているが、短期間に3回も登場した大臣は下村氏のみだ。

 家庭連合の名称変更について文化庁宗務課を取材すると、こう回答した。

「以前から相談を受けていたのは事実ですが、申請があったのは今回が初めて。宗教法人法28条の規定に基づいて適正と判断したため、認証しました」

「今回認証申請が認められたのは、法に定められた要件を備えているため、と理解しています」(家庭連合広報局)

 家庭連合と自民党との関係を本誌はこれまで度々、報じてきたが、神政連と日本会議の両方に所属するある自民党議員によると、両者の接点も「反共」という。

 文鮮明氏は共産主義への対抗運動の一環として右翼系政治団体「国際勝共連合」(68年)、「世界平和連合」(91年)などを設立し、安倍首相の祖父、岸信介元首相はその支援者として知られた。特定秘密保護法の前身とされるスパイ防止法の制定、「戦後レジームからの脱却」、改憲などを昔から一貫して主張し、安倍政権とも思想的に近い。

 3月に韓国・ソウルで行われた家庭連合系のイベントで、自民党の参院議員がわざわざ祝辞を述べたり、昨年10月に東京都八王子市で行われた家庭連合会長の講演会では、萩生田官房副長官が来賓挨拶を述べた。

 安倍首相の覚えがめでたいと言われる稲田政調会長も09年に家庭連合と関連が深い世界平和連合の大会で講演を行い、安倍首相自身も10年、これまた家庭連合と関連の深い世界戦略総合研究所が議員会館内で定期的に開いている会合に講師として参加。その様子は同会のホームページに写真つきで紹介されていた。

 衛藤首相補佐官は同研究所のために議員会館の部屋を借り、講演をしたこともあった。

 こうした関係は、選挙を通じて培われているものだと、自民党元選挙スタッフが証言する。

「13年の参院選で、私は安倍首相と近い議員の下で働きましたが、世界平和連合の名刺を持った秘書が2人派遣されてきて、手紙の発送、集会の動員などを手伝っていた。当選が危ぶまれたのですが、家庭連合から数万票が入り、逆転で当選しました。前回の参院選で家庭連合の支援を受け当選した議員は他にも複数いました」

 水面下で繰り広げられる宗教界の勢力争いは、来年の参院選挙にどんな影響を及ぼすのか。ジャーナリストの高野孟氏が語る。

「安保法制を押し通したことで、公明党の支持母体である創価学会の中で自民党へのわだかまりが強くなっており、選挙の際にこれまでどおりの動きを期待できない可能性がある。そうした危機感が安倍政権を日本会議・神政連や家庭連合へ接近させているとも考えられるが、右派色の強い団体への接近が、創価学会の反発をより強める結果になるのではないでしょうか」

(本誌取材班)

週刊朝日  2015年10月23日号より抜粋