「患者には安静、保温、保湿、栄養・水分補給などの指導をするが、風邪を『治す』ことはできない。インフルエンザと違い、一般的な風邪には特効薬はない」

 ただし、症状が重い人や基礎疾患がある人、高齢の患者には、二次感染(細菌感染)を防ぐ抗菌薬と咳や熱などの症状を取り除く対症療法が必要な場合もある。二次感染では、肺炎や中耳炎で重症化するケースもあり、病院での治療が欠かせない。健康院クリニックの細井孝之医師は言う。

「対症療法で症状を除き、体力を奪われないようにする。風邪は免疫の力でしか治せないから、その力をできる限り落とさないよう、熱を下げたり、咳で眠れないのを解消したりしたほうがいいでしょう」

 1回咳をするごとに2キロカロリーが消費される。就寝中に何度も咳き込めば、眠りが妨げられるだけでなく、咳による体力消耗も大きい。それが結局、こじらせたり、長引かせたりする原因になってしまう。

「とくに高齢の方は対症療法でしっかり症状を除き、体を休める。それが何より有効な風邪治療だと思う」

 と、細井医師は話す。

 二次感染がなくても、風邪をひくと食欲が落ち、脱水症状に陥ったり、免疫細胞の材料となるたんぱく質が減ったりし、さらなる体力低下をもたらす。長く寝込むと筋力も低下する。

「高齢者だと、2~3日寝込んだだけで、以前の生活に戻れなくなる場合もある。何よりも予防が大事です」

週刊朝日  2015年10月16日号