河合:議決書を受け取るまでは、ほんとにハラハラドキドキでした。2回も検察の決定を覆せるものなのかなと心配しました。審査会には11人の審査員がいるんですが、7対4でも否決で、8対3以上でないと勝てなかった。そもそも、全てが秘密で、いつ議決書が出るのかという日時さえ、問い合わせても教えてくれなかった。

――ギリギリの勝負ですね。

河合:検察審査会の審査員11人は、原発のことも法律のこともよくわからない市井の人なわけです。そうした審査員の方々の質問に、粘り強く説明した『議決書の作成を補助した審査補助員』という立場の弁護士の存在があったんです。1回目の審査の時も2回目の審査の時も、たまたま素晴らしい弁護士が1人ずつ選ばれた。ほんとに僕は感動したね。検察は不起訴と言っていたわけだから、その理由はいっぱい書面に書いてある。そんなのを読んだら普通、補助員らは嫌気がさして、不起訴でいいやとなり、審査員らの質問にも適当に答えてしまうものです。しかし、正義感が強い弁護士だったんだと思う。審査員らに起訴の意義などを根気強く説明してくれた。補助員の報酬はせいぜい10万~15万円です。日本の弁護士はカネ儲けばっかりしてロクな奴がいないとかいろいろ批判されているけど、捨てたもんじゃないと思いましたね。

――東電旧経営者3人を「起訴すべき」とした歴史的な意義は?

河合:もし、否決されていたら、3.11の真の原因はすべて闇に葬られていました。福島原発事故の原因は、事故発生後ではなく、あくまで事故発生前に全部あったんです。そこを究明しないと、何でああいうことになったのか、誰が悪いのかということがわからずじまいになる。まさに、否決されたら、そういうふうになるところでした。

週刊朝日 2015年8月21日号より抜粋