「忘れてはいけないのは東芝の大黒柱のひとつだった原子力事業です。福島第一原子力発電所の事故以降、日本の原子力産業は壮大な不良債権になりました。東芝で原子力事業を追及したら、うやむやにしてきた東京電力や日本原子力発電などにも飛び火するかもしれません。それを懸念して積極的に追及できないのではないでしょうか」

 原発ビジネスの拡大を見込んで2006年に買収した米大手原子炉メーカーのウェスチングハウスは原発事故後、事実上の不良債権化している。それによって、財務状況が相当いたんでいる可能性があるのだ。

 だが、財務内容の精査は、今回の第三者委員会の調査の対象外だった。同委員会は、東芝の依頼を受け、7年間分の損益への影響を調査したに過ぎない。これでは、全貌と原因を明らかにするにはほど遠い。

「今回の問題は、会計処理の判断に関わることなので、東芝側が会計監査人の監査法人にどのように説明し、監査人がどう判断したのかが最大のポイントです。その点に触れず、何ら問題を解決しないまま、今後も同じ監査法人に会計監査を担当させることは許されません」(元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士)

 一方、会計士の規制団体である日本公認会計士協会は監査法人の監査に問題がなかったかどうか、現在調査中だが、あまり期待できそうにない。

「協会と金融庁は定期的に新日本(有限責任監査法人)など監査法人が正しいチェックをしているか、検査を行います。東芝が不正会計を行っていた期間、新日本は検査を受けていましたが、その対象に東芝も含まれていました。今になって監査法人の問題を指摘すると、自分たちが見逃していたことを認めることになり自らの首を絞めかねません」(業界関係者)

 東芝の闇は深い。

(本誌・長倉克枝)

週刊朝日 2015年8月7日号より抜粋