国会で最大の焦点となっていた安全保障関連法案が衆議院本会議で可決されたが、作家の室井佑月氏は国民に対して安倍首相はもっと説明をすべきという。

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 安倍政権がよくわからん。

 毎日新聞が7月4、5日に実施した全国世論調査によると、9月27日まで延長した通常国会で安保法案を成立させる政府・与党方針に、賛成が28%、反対が61%だった。内閣不支持層では91%が反対だ。

 安保法制が今どうしてもこの国には必要で、なにがなんでもやらねばならんというのなら、なぜこの91%の層に訴えようとしないんだろう。安倍さんがよくいう「丁寧な説明をしつくす」という言葉は、この91%に向けられるべきものだよね。

 が、安倍さんが国民への丁寧な説明をするために選んだ場所は、「月刊WiLL」と自民党のインターネット番組。自分と似たような思想の人たちの溜まり場だ。自信ないのか?

 仲間内で「安倍ちゃん最高!」とか「888……」とかやっていればそれで満足ってか? 高村副総裁は「理解がなくてもやるときはやる」っていっているみたいだし。

 あたしはこういう考え方の人たちが、この国のトップでいることにもう笑えなくなっている。だって、まるでヤンキーの集会だ。あなたたちはそれでいいのかもしれないけれど、世の中はあなたたちだけじゃないのだ。それがまったく見えていない&わかっていない。この人たちが船長でいる船に乗っていて大丈夫か。

 
 ネット番組での安倍さんの説明も、ヤンキー向けだったしな。

「『安倍は生意気だ』と私を殴ろうとする不良がいる。するとアソウという友達が『おれはケンカが強いから守ってやる』と言って一緒に家に帰ってくれた。そこに3人くらいの不良が出てきて、前を歩いていたアソウさんに殴りかかった。3対1だから私もアソウさんと一緒に対応する。これが今回日本が行使しようとしている集団的自衛権だ」

 だとさ。あの~、ヤンキー理論ではそうなのかもしれませんが、普通の感覚なら、なぜ安倍くんを殴ろうとする人がいるのか、お友達であるアソウさんが、安倍くんと考えるところからはじめると思うんですけど。どうしたらそういう物騒な話にならないのかと。

 そうそう、安倍さんは6日の自民党役員会で、安保関連法案の必要性を訴えるためネット番組に出演することに関し、

「テレビ番組に出たいが、どこも呼んでくれない」

 とぼやいたらしい。ああ、もう、そこも理解してもらえてない?

 テレビ局は建前上、公平であることを謳っているわけで、さすがにあなたたちの一方的な意見だけは流せないの。あなたたちの意見に反対する人もいるわけで、あなたたちはそういう人と一緒に出るのが厭なんでしょう?

 最後に、ネットで面白い歌を見つけたから広めておこう。

「あなたが 自民感じ悪いよねって言ったから 7月3日は 石破記念日」

 さすが石破さん、発言の記念日の歌まで出来ちゃって、人気者ですなぁ。

週刊朝日 2015年7月31日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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