しかし、元五輪日本代表の有森裕子さんらからも批判が噴出。首相と親しい橋下徹大阪市長も「お金がない家庭がフェラーリを買うと言ったら『アホか』と言われる」と切り捨てた。

 自民党内からも見直しを求める声が続出。小池百合子元防衛相は党総務会で「建設によって選手の強化費にしわ寄せが来るのは問題。小泉元首相なら英断している」と発言した。中部地方選出の議員は言う。

「東京の話題なのに県民の関心がとにかく高い。街頭で『自民党は相変わらず税金のムダ遣いをしている。変わっていないじゃないか!』とよく怒られます。“古い自民党”の象徴である森喜朗元首相が暗躍している点も、マイナスです」

 安保法案の衆院通過で揺れる16日、安倍首相は国民の目をくらませようと思ったのか、建設計画の見直しに着手。総工費を2千億円未満に減額するよう指示を出した。翌17日には官邸で、東京五輪組織委員会会長を務める森元首相と会談。その後、記者団に「現在の計画を白紙に戻す。ゼロベースで見直す」と語った。

 ただし具体策の検討はこれから。費用を圧縮できるのか、五輪本番までに完成させられるのかは不透明だ。

 党内からは、今後の「景気の悪化」を心配する声も出ている。これまで異次元の金融緩和でだぶついたマネーが市場に流れ、株価を押し上げていた。「だがそれも限界。今後は厳しくなる」と経済評論家の山口正洋氏は指摘する。

「株価はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と日銀が買い支えているから高く見えますが、実態はありません。実質賃金は25カ月連続でマイナスを続けているという現実からすると、今後、株価は下がっていくでしょう。円安による輸入物価の上昇もあり、個人の生活は厳しくなる。景気を良くするには、消費税を元の5%に戻すことぐらいしか、残されていないのではないか」

週刊朝日 2015年7月31日号より抜粋