福島を視察する安部首相(代表撮影) (c)朝日新聞社 @@写禁
福島を視察する安部首相(代表撮影) (c)朝日新聞社 @@写禁

 全国に散らばる原発事故避難者の間に困惑が広がった。国と福島県が決めた自主避難者への住宅無償提供打ち切り。生活困窮者を出しかねない政策に、避難者からは「あまりに一方的すぎる」と怒りの声が上がっている。ジャーナリストの桐島瞬氏が彼らの現実を伝える。

 7月2日、都内に自主避難者らが集まり、国と直接交渉を行った。参加した「避難・支援ネットかながわ」代表の坂本建さんが失望したように言う。

「私たちがいくら支援を打ち切らないよう要望しても、内閣府や復興庁の担当者は『ご意見は受け止めました』と言うだけ。金をばら撒いて、予定通りに住民帰還を進める国の姿勢がよく分かった。被災者の人権なんて考えてくれない」

 福島県が国庫財源を使って自主避難者に行っている家賃負担は月額6万~9万円。震災後3年目からは1年単位で支援措置を延長してきたが、再来年4月以降は延長しないことを6月15日に決めた。

 安倍政権が帰還困難区域を除く避難指示を17年3月までに解除すると閣議決定したわずか3日後だ。

 福島原発事故などが原因で今も避難生活を強いられている人は11万2千人余り。このうち避難指示区域外から避難している約3万6千人の自主避難者が住宅提供打ち切りの対象になる。

 福島県によると、打ち切りは支援の根拠法となっている災害救助法の趣旨に沿ったものだという。

「応急救助を趣旨とする災害救助法では支援は2年が原則。それが5~6年となるとハードルも上がる。そのため国と協議して打ち切りを決めました。除染とインフラの整備が進み、住民が戻れる環境になってきたことも大きい」(福島県避難者支援課)

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