小林:そう、採点対象にならない。

長谷部:同じことの繰り返しで、要するに、反論できないということを示したんですよ。

小村田:落第ですか?

小林:答案の形で出てきたら「失格」と言いますよ。「自分は間違ってない!」という確信だけ強くて、一種の「バカの壁」ですね。論争になっていない。

小村田:自民党の高村正彦副総裁は「憲法学者はどうしても憲法9条2項の字面に拘泥する」と発言しました。

小林:ふざけんな、と。条文というのは、憲法であれ法律であれ、不完全な人間が将来に向かって間違いを犯さないように話し合って書いた約束なんですね。字面に拘泥(こうでい)しないということは、こう書いてあるけど、俺は違ったようにやりたいから四の五の言うな、ということでしょ。独裁政治の始まりなんですね。民主主義の否定なんですよね。彼らは字面を無視して自分の思いに拘泥する。独裁者の発想じゃないですか。

長谷部:日本を取り巻く安全保障環境が危険になっていると言うのなら、日本の限られた防衛力を全地球的に拡散するのは愚の骨頂です。サッカーに例えれば、自分のゴールが危ない時に味方の選手を相手陣営に拡散させる行為。どこにそんなチームがありますか。全世界的に米軍に協力すれば、いざという時に米国が日本を真剣に守ってくれるなんて、全くの希望的観測だと思います。

小林:おっしゃるとおり。

長谷部:米国は憲法によって本格的な軍事行動には連邦議会の承認が必要です。日本が想定しているのは、お隣の大国でしょうが、そんな承認を連邦議会がするでしょうか。シリアへの空爆でさえ、オバマ大統領は連邦議会の承認を取りつけられなかった。日本政府の人たちは、どうして米国をそんなに信用できるのか。非常に不思議です。

週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋