──団体客だけではなく、高所得層まで来てもらえるように、一つの層に偏らないアプローチが大切なのですね。

「幅広い客層をつかむことが大切です。外国人のお客様も大切ですが、日本のお客様にも来ていただきたい。テーマパークというと、若い人たちが行くようなイメージがありますが、若いカップルだけでなく、家族、またはおじいちゃん、おばあちゃんのシニア世代までが楽しめるように、園内にベンチをたくさん設け、四季折々の花がいつでも楽しめるように花は絶やさないようにしています」

──5月8日からハウステンボス史上最大「111万本のバラ祭」が始まります。

「中高年には庭園が人気です。季節の風物詩だけでなく、常設のイベントにも力を入れています。宝塚のOGらで結成した『ハウステンボス歌劇団』は人気が定着しました。宝塚のように団員の育成にも力を入れようと、『ハウステンボス歌劇学院』も開校し、この春、卒業した第1期生の初舞台が行われました」

──タカラジェンヌならぬ、HTBジェンヌと言うんですね(笑)。

「先日、楽屋を訪ねたらファンからの差し入れがたくさんあり、追っかけファンもいるようです(笑)。あと数年でスターが出てくれば、もっと注目されるでしょう」

──次から次へと企画が目白押しですが、実行していくためには、従業員のスキルアップも重要になってきます。意識改革はどのように行ったのでしょうか。

「ハウステンボスは1992年の開業ですが、私が社長として就任するまでの18年間赤字が続いたので、雰囲気は明るくありませんでした。就任してから従業員の皆さんに言った言葉はいたってシンプル。『8年間ボーナスが出なかったから、みんなでがんばって利益を上げましょう。利益を上げてボーナスをもらおう』。そして、私たちはお客様に夢と感動を与えるのが仕事なので『明るく元気に振る舞ってください』と伝えました」

──それですぐに変わるものなのでしょうか。

「いいえ、そう簡単には組織は変わりません。サービスの考え方、クオリティーの高いサービスをしっかり指導しています。リストラはしていませんが、成果主義なので成果が出なければ配置転換を行うなどの組織替えは行います。私は今、ハウステンボス内のホテルに1カ月の半分ほど住んでいます。朝起きて園内を一周して気がついたことを徹底して改善させます。問題点が五つあれば点数はゼロ。三つに減ったら1点上がる、といったように、私の視点で点数をつけて65点以上を目指しています。私が就任して5年が経ちましたが、ようやく58点になりました。もっとお客様に満足していただくためにも、サービス、イベントと食事、すべての側面において高い質を求めていきます」

──これからの目標を教えてください。

「ボーナスが出たので、次は九州一、待遇の良い会社にしようという目標を立てました。そのためには、イベントをさらに進化させます。3Dプロジェクションマッピングはさらに最新の技術で今年の冬ぐらいを目標にバージョンアップさせようと計画を立てています。また日本でも大人気の韓国出身の男性デュオ、東方神起らが出演するホログラムシアター『SMTOWN THEATRE@HUIS TEN BOSCH』も、定期的に楽曲を入れ替えて、メンバーの一人を登場させてどちらが本物かわからないといった、衝撃的な内容にしたいと思っているので、これからもぜひ期待してください」

(構成 本誌・村田くみ)

週刊朝日 2015年5月8-15日号より抜粋