法案成立に積極的な安部首相 (c)朝日新聞社 @@写禁
法案成立に積極的な安部首相 (c)朝日新聞社 @@写禁

 ゾンビ法案がまたもよみがえった。これまで2度廃案になった労働者派遣法改正案が、今国会で提出となった。派遣労働を大幅に自由化する内容に、野党は「正社員ゼロ法案」と批判している。

 それでも、安倍政権が短期間に3度目の提出を強行したのには理由がある。民主党政権時代の12年の派遣法改正で、違法な派遣が行われている場合、強制的に派遣先の正社員にさせる「労働契約申し込みみなし制度」が導入されたためだ。

 派遣法に詳しい棗(なつめ)一郎弁護士は言う。

「みなし制度は、企業に与える影響が大きいとして、3年間の猶予期間が与えられました。それが今年10月に施行されます。そうなれば、期間制限違反など違法な派遣がなされている場合、派遣労働者は派遣先の会社に正社員への雇用を求めることができます。10月以降は派遣先の企業へ団体交渉の申し入れや訴訟が相次ぐ可能性もある」

 みなし制度はすでに韓国で導入された。昨年9月には現代自動車の下請け労働者が千人以上で集団訴訟をおこし、勝訴した。

「使用者側は、紛争の多発を避けたい。そこで『違法派遣』とされやすい26分野の専門業務を撤廃し、みなし制度を骨抜きにしたい。特に『事務用機器操作』や『ファイリング』などは、どこまでが専門的な業務なのか線引きがあいまいで、みなし制度の対象になりやすい。法改正で違法な派遣労働を合法化してしまいたいのです」(棗弁護士)

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