こうした「貧困」を裏付けるデータがあっても、まだピンとこない人は多いだろう。その理由について、同NPOの事務局長の天野敬子さんがこう指摘する。

「日本の貧困は、途上国の貧困とは違います。とりあえず服を着ているし、義務教育だから学校にも通っている。雨風をしのげる家もある。だから現実感が乏しい」

 夜の児童館の無料塾に集う他の子どもたちも、見た目は「ふつう」だ。

「安いファストファッションがいくらでもあります。コンビニに行けば100円で大きめのパンも買える。けれど、わずかでも費用のかかる課外活動に参加できない、栄養バランスの高い食事が取れないなど、落ち着いて暮らせる状態にはありません」(天野さん)

 だが、NPOなどの活動に「つながる」ことのできる人や、わずかでも収入がある人は、貧困層でも恵まれているほうだという。

 13年5月、大阪市北区天満のワンルームマンションで、母(28)と男児(3)の遺体が見つかった。死後数カ月が経過していた。部屋に冷蔵庫はなく、食べ物は食塩だけ。電気、ガスは止められていた。財布に現金は一円もなく、預金の残高は数十円。「おなかいっぱい食べさせたかった」と書かれたメモが残されていた。

 12年9月には、東京都小金井市で、生活保護を受けていた無職女性(43)が長女(12)と無理心中を図り、死亡する事件もあった。天野さんは、こう指摘する。

「保護者に社会とつながる力がない場合、働くこともできず、どんな行政支援があるのかも知らない。親も子もどんどん孤立していく。見えない『貧困』はもっとあると思います」

週刊朝日 2015年3月6日号より抜粋