認知症発症の予防が期待できる栄養素や予防食を日々、効果的にとるにはどうすればいいか。栄養学の専門家や管理栄養士にポイントやレシピなどを聞いた。

 DHA、EPA、ポリフェノール、葉酸といった栄養素を、日々の食事にどう取り入れたらいいか――。認知症予防の食生活指導に取り組む管理栄養士の可野倫子(かののりこ)さんに、おすすめのメニューを考案してもらった。また、それぞれの栄養素の上手なとり方のポイントも聞いた。

「まずDHAやEPAですが、これらは魚のなかでも、とくに青魚に多く含まれています。鮮度とともに減ってしまうので、なるべく新鮮なものを買い求め、買ったらすぐに調理するのがポイントです」(可野さん)

 それがむずかしい場合は、生の魚ではなく水煮の缶詰を利用するとよいそうだ。新鮮な魚を水煮にしているため、栄養成分はあまり変わらない状態で缶に詰まっている。

「水煮の缶詰に入っているアブラは、魚自身のアブラ、つまりDHA、EPAなのです」(同)

 今回紹介している料理は、アジやサバ、サンマ、ウナギを使ったもの。アジは比較的手ごろな値段で手に入り、半身(約100グラム)で約1グラムのDHAが含まれる。最新の厚労省の報告によると、n–3系多価不飽和脂肪酸の摂取量の目安は1日約2グラムなので、半分の量を一度にとることができる。

「ウナギは、DHAやEPAだけでなく、たんぱく質や抗酸化作用のあるビタミンEが豊富。代謝に欠かせないビタミンB1、B2も豊富なので夏バテ予防も期待でき、暑い時期におすすめです」(同)

 ポリフェノールは、果物や野菜に含まれるが、多くが水溶性で、加熱で失われやすい。可野さんは、「加熱したものを丸ごととるスープや味噌汁などの汁物、煮物がよい」と話す。

 
 夏野菜の代表格であるナス。効率よくポリフェノールをとるには、調理の際、長時間水にさらさないようにするのがポイント。

「ナスは煮浸しや味噌汁などでも活躍する野菜ですが、皮を素揚げにし、身はさいの目に切り、抗酸化作用のあるオリーブオイルと塩、こしょうで調味すれば、それだけで赤ワインに合う一品になります。もちろん、飲みすぎには注意してくださいね(笑)」(同)

 夏にぴったりな献立「トマトの冷麺」も教えてもらった。トマトにもポリフェノールが豊富に含まれる。ゆでて流水で洗ったきしめんに、ゆでた枝豆と、適当な大きさに切ったトマト(缶詰でも可)、ナス、タマネギをのせ、オリーブオイルで炒めたニンニクととうがらしをかけ、塩、こしょうとケチャップで味を調える。食欲がなくても、これならツルッと食べられそうだ。

 チーズ、ヨーグルトなどの乳製品や牛乳は、料理しなくても食べたり飲んだりできるが、より積極的にとるためには、バタートーストをチーズトーストに、紅茶をミルクティーにするなどの応用も必要。

 牛乳ではこんなユニークな工夫もできる。味噌汁に入れるというのだ。意外な組み合わせだが、コクが出るので、そのぶん味噌を減らせる。減塩も期待できるので、一石二鳥だ。

 ポリフェノールと葉酸の両方を含む緑茶は、毎日欠かさず飲みたいが、ただ飲むだけではもったいない。料理に使えないだろうか。

「もちろん、使えますよ。緑茶を米と一緒に炊き、炊き上がったら茶葉をふりかけます。おいしい『緑茶ごはん』ができあがります。この方法だと、茶葉も食べるので、緑茶の栄養素がまるごととれます」(同)

「この食品がいいからと、同じものだけ食べるのではなく、偏らずいろいろな食材をとれば、栄養はしっかりとれます。これを機に、いろいろな料理にもチャレンジしてほしい。それが脳の活性化や認知症予防にもつながっていくでしょう」(同)

週刊朝日  2014年8月15日号より抜粋