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読者数は減ってない? 作家が“本の売れない理由”を語る

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(更新 2014/4/28 07:00)

楡周平(にれ・しゅうへい)1957年生まれ。慶応義塾大学大学院修了。96年、米国系企業在職中に執筆したデビュー作『Cの福音』が30万部を超えるベストセラーになり、翌97年から作家業に専念。経済・企業小説から冒険小説まで、綿密な取材に裏打ちされたリアリティーと圧倒的なスケールで読者を魅了する。著書に『ゼラフィム』『象の墓場』『レイク・クローバー』『衆愚の時代』『スリーパー』など多数。14年3月まで産経新聞で連載していた憲法を題材にした小説「ミッション 建国」が今夏に発売予定(撮影/写真部・工藤隆太郎)

楡周平(にれ・しゅうへい)
1957年生まれ。慶応義塾大学大学院修了。96年、米国系企業在職中に執筆したデビュー作『Cの福音』が30万部を超えるベストセラーになり、翌97年から作家業に専念。経済・企業小説から冒険小説まで、綿密な取材に裏打ちされたリアリティーと圧倒的なスケールで読者を魅了する。著書に『ゼラフィム』『象の墓場』『レイク・クローバー』『衆愚の時代』『スリーパー』など多数。14年3月まで産経新聞で連載していた憲法を題材にした小説「ミッション 建国」が今夏に発売予定(撮影/写真部・工藤隆太郎)

「いいね!」が社会を破壊する

楡周平著
定価:799円(税込)

amazonamazon.co.jp

『「いいね!」が社会を破壊する』などの著書で知られる楡周平さん。作家になる以前、フィルムメーカーのコダックに勤めていた楡さんは、現在の出版業界への危機感に、かつてのフィルムメーカー業界と同じ危うさを感じると作家・林真理子さんとの対談で語った。

*  *  *
林:楡さんは作家になる前、コダックに勤めていらしたんですね。世界最大のフィルムメーカーで、株価もガンガン上がって、すごい優良企業だったのに、ある日、経営破綻してしまう。フィルムというものがなくなって、デジタルが出てきたせいで。

楡:衝撃的な出来事でしたね。僕は作家になる前の3年ぐらいの間、デジタルのマーケティングを担当していて、「皆さんのビジネスはもうすぐなくなりますよ」というプレゼンテーションをやってたんです。

林:そのときの反応、どうでした?

楡:「こんなにうまくいってるのに、フィルムがなくなるなんてあり得ない」というのが、大方の反応でしたね。ピンとこなかったようで。いま思うとそれも仕方なくて、当時(90年代前半)、すでにデジカメもパソコンもあったんですけど、画像データは重いしフリーズはするしで、とても仕事に使えるようなものではなかったんです。だけどデジタルをやってる人間は、10年先の進化したコンピュータの世界を考えますから、「どう考えてもフィルムは終わる」ということがわかってしまうわけで。

林:時代を読み切れなかったんですかね。

楡:というか、あまりにも完全に確立されたビジネスモデルがあると、そこから脱しきれないんですよ。

林:いまの出版業界にも同じことが言えますか。

楡:そう思います。去年の大晦日の夜7時のNHKニュース、つまり昨年最後のニュースの中で、「出版業界はこれだけ縮小している」というのをやってたんですよ。ピークだった1996年、これは私がデビューした年ですが、そこからいまは5分の3に減ったというんです。17年間で40%縮小してるんですね。とたんに気分が暗くなっちゃって、そのまま年を越しました(笑)。

林:音楽もパソコンやスマホにダウンロードするようになってから、CDが売れなくなりましたよね。バブルのころは100万枚売れてた国民的大歌手も、いまは1万5千枚しか売れないというから、慄然としますよ。

楡:じゃあその人の音楽が聴かれてないのかというと、そんなことはないんですよね。ただ、みんなコンテンツに対してお金を出さなくなった。出版業界も市場が縮小し続けていますが、みんなが本を読まなくなったのかというとそうではなくて、図書館の貸し出し数はずっと右肩上がりなんです。

林:そうなんですよね。女性誌の「節約特集」なんか見ると、必ずといっていいほど「本は図書館で借りましょう」とあって、本を買う人は変わってる、節約しない人みたいな書かれ方じゃないですか。

楡:読者の絶対数はそんなに減ってなくで、要はタダで読むことを覚えちゃったんです。全国の図書館の貸し出し状況が見られる「カーリル」というサイトがあるんですけど、あっという間に予約が埋まるんです。みんな自分のお金を出したくないんですよ。いままで本を買い支えてくれたコア層の一つは、団塊の世代だったと思うんですが、その団塊の世代が定年退職して時間がある、じゃあ本を買うかというと、そうはならない。

林:図書館に行くんですよね。

楡:僕らは小屋がけ(芝居小屋をつくって芝居をすること)してるわけですよ。そこでお代をいただいて、そのお代に値するかどうかはお客さんに判断してもらって、それで生きてるわけですよね。ところが、活字の世界でお金を得ることに対して、すごくネガティブな反応を示す人たちがいるんです。

林:そうなんです! 昔、イザヤ・ベンダサンが「日本人は水と安全はタダだと思っている」と書いてましたけど、いまは情報がタダだと思ってますよね。

週刊朝日  2014年5月2日号より抜粋

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