まるで隠れキリシタン? 放射能「楽観派」と闘う母親たち


(更新 2013/9/26 11:30)

震災後、少しでも放射性物質を除去しようと、約20万円の高機能浄水器を購入した家も。「安心が手に入るなら、多少の出費も止むを得ない」と話す(撮影/写真部・慎芝賢)

震災後、少しでも放射性物質を除去しようと、約20万円の高機能浄水器を購入した家も。「安心が手に入るなら、多少の出費も止むを得ない」と話す(撮影/写真部・慎芝賢)

いまでも水道水の代わりに学校に水筒を持たせる親もいる。取材したある家では、2年半の子どもの成長に伴い、水筒の種類が増えたという。「愛情」と受け止めてくれるのが救いだ(撮影/写真部・慎芝賢)

いまでも水道水の代わりに学校に水筒を持たせる親もいる。取材したある家では、2年半の子どもの成長に伴い、水筒の種類が増えたという。「愛情」と受け止めてくれるのが救いだ(撮影/写真部・慎芝賢)

 福島第一原発からの汚染水流出など、いまだに不安要素が増え続ける原発問題。原発事故から2年半たったが、母親たちは子どもを守るために闘っている。

 都内に住む教員の女性Aさん(47)は、千葉にある夫の実家を数カ月に一度、家族で訪れる際、自分に言い聞かせることにしている。

「今日は目をつむろう」

 対象は義父だ。この日もいつものように中学生と小学生の息子にうれしそうに尋ねてきた。

「よく来たね。お昼は寿司をとろうか?」

 Aさんが、放射能汚染物質による内部被曝を気にするようになったのは事故から数カ月後。ホットスポットと呼ばれる地域で息子の学校の移動教室が予定されたのがきっかけだった。

 声を上げるママ友の影響を受け、情報を集めるにつれ、「楽観派」の義父との葛藤が深まった。最終的に嫁として、義父の孫たちへの「善意」を断ることも、出前をとる寿司店で使われる魚の産地を確認することも不可能と判断したAさんが決めたルールは「夫の実家以外では寿司を食べさせない」ことだった。

 対外的なお付き合いの食事には目をつぶる。その分、家で息子たちが食べる食事には、米をとぐ水から煮炊きに至るまでミネラルウオーターを使う。野菜は放射能測定検査済み宅配で買う。そうした努力を自分が行うことによって、「息子の体に入る放射性物質の総量を少しでも減らせるのでは」と考えている。

「マグロ丼食べてきたの? なんで? パスタかラーメンにしたらってママ言ったじゃない!」

 東京都品川区に住む専業主婦のBさん(34)は、腹が立って仕方がなかった。小学1年の息子が、ママ友一家にアニメ映画を見に連れて行ってもらった帰りのファミレスで、事前にやんわり禁止を伝えていた海産物のメニューを頼んでいたからだ。

 下の娘がまだ3歳と幼いため、息子を連れ出してくれるママ友の存在は助かる。だから「内部被曝が怖いので息子には海産物を食べさせないで」とは言えない。これまでの会話から察するに、このママ友は「楽観派」だ。仕方なく、息子に言い含めたのに。あっけらかんとした表情を見れば見るほど「ママはあなたのためを思って」と言いたくなる。仕事から帰ってきた夫に愚痴をこぼすが、夫もただ笑うだけ。期待する共感は得られない。

 AさんもBさんも学校や幼稚園など、身近な場所に、放射能汚染を気にする親は少なくなってきたと感じる。「隠れキリシタン」のように、自分の信念を隠して社交的な付き合いを続ける中で、会話の端々から仲間を探し続ける日々だ。

AERA  2013年9月30日号

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