杉浦良美さん
杉浦良美さん
℃-uteのシングル《The Middle Management ~女性中間管理職~/我武者LIFE/次の角を曲がれ》
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℃-uteのシングル《The Middle Management ~女性中間管理職~/我武者LIFE/次の角を曲がれ》
ベイビーレイズJAPANのシングル《栄光サンライズ》
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ベイビーレイズJAPANのシングル《栄光サンライズ》
さんみゅ~のシングルベイビーレイズJAPANのシングル《はじまりのメロディ》
さんみゅ~のシングルベイビーレイズJAPANのシングル《はじまりのメロディ》

アイドルを輝かせている人々」にスポットを当てる当シリーズ、今回から“ボイトレの杉浦先生”こと杉浦良美さんにご登場いただく。アイドルだけではなく、声優、俳優、舞台等のボイトレも担当し、自らもオペラ歌手としてライヴ活動を行なっている幅広い視野の持ち主だ。

 ぼくが杉浦さんのボイトレ技を初めて目の当たりにしたのは2013年1月、ベイビーレイズ(当時)の定期イベント「虎ノ門道場」内でのことだ。まずメンバーが発売間もないシングル《ベイビーレボリューション》を力いっぱい歌い、その後で杉浦さんが登場。自らキーボードで伴奏して、各メンバーの歌い方に助言を与えた。道場の後半でベイビーレイズはもういちど、シングルと同じオケ(伴奏)を使って《ベイビーレボリューション》を歌ったのだが、効果てきめんとはまさしくこのこと。力みがすっかりとれ、メリハリがつき、パフォーマンスそのものも一回りも二回りもスケールを増したように感じられた。

「指導によって歌がこんなに生き生きするのか。いつかお話をうかがってみたい」と思ってから約2年半。ようやくその機会が訪れた。

――アイドルのボイトレをなさるようになったきっかけは?

杉浦良美 音楽学校でボイトレをしていた時期が何年かあるんです。そこをやめてフリーランスで活動していた時に、レコード会社に勤めていたときの元上司にスタジオの前でバッタリ会って、1カ月後にそのひとの秘書から「アイドルのボイトレをお願いしたい」という電話をいただきました。それがデビュー当時の℃-uteだったんです。日本青年館のライヴを見に行って、「こういう子たちを教えていくのか」と思ったことを覚えています。それが始まりでしたね。ベリキュー(Berryz工房×℃-ute)、Buono!、スマイレージ(現・アンジュルム)、アップアップガールズ(仮)、ベイビーレイズ(現・ベイビーレイズJAPAN)、あとBuono!のディレクターが移籍して、その関係でさんみゅ~を教えるようになったり。いろんな情報がまわっていろいろ話が来るようになった感じです。

――℃-uteの鈴木愛理さんをぼくはアイドル界随一の歌姫だと思っているのですが、第一印象はどんな感じでしたか?

杉浦 愛理ちゃんは最初から本当にうまかったです。逆に小さい時からうますぎたから、それでスランプ気味になったこともあるみたいです。うまさが鼻につくことがあったというか……。(プロデューサーの)つんく♂さんからも「もうちょっと愛情が伝わるような、本気で心に届くような歌を歌わなきゃ」と言われたみたいですけど、根本的にはもともとすごくうまいし、今はそれを乗り越えてまたひとつ更にうまくなっていると思います。℃-uteは皆、うまいです。

――壁に当たったシンガーを、どのように次のステップへ導くのですか?

杉浦 愛理ちゃんに関しては「なぜ、皆がそうしなさいと言っているのか」「それはどういうことなのか」という理屈を説明しました。「ここがこうだから、こういうふうに聴こえるでしょう? これをこうしたらこういう風に聴こえないよね」ということを一生懸命言葉で伝えました。愛理ちゃんは賢いので、そこを理解してくれたんです。

 ℃-uteを担当する時に、当時のマネージャーさんから「基礎をしっかり教えてください」と言われました。要は腹式呼吸だったり、発声法ですね。「ハロプロの中ではうまいかもしれないけど、その発声じゃ外では全く通用しないよ」ってガンガン言って。「ハロプロでうまい(というポジション)にとどまりたくない」という意識がすごく高い子たちです。

――Berryz工房は、いかがでしたか?

杉浦 もともと℃-uteはまじめで普通の子です。Berryzはちょっと天才っぽい子がいっぱいいて、(菅谷)梨沙子、(夏焼)雅、ももち(嗣永桃子)も「エッ!」というぐらいびっくりするぐらいいい歌を歌うときがあって。それってもうこっちの教えられることではなくて。瞬発的にすごいなみたいな歌はBerryzのほうが多かった。雅ももうちょっと真面目に鍛えればもっとうまくなるんだけど、やらないの。練習が苦手なんですよ。「こういう風にやって」と言っても、「もう無理無理」って。こっちの理屈なんて通用しないみたいなところがあるんです。でもすごく魅力的な子で、アーティストっぽい。

――アップアップガールズ(仮)との出会いは?

杉浦 私はスマイレージ(第1期、第2期)のボイトレを担当していたんですが、そのときのマネージャーさんがアップアップを始めて、その縁ですね。今でもそのマネージャーさんに言われますよ、「先生、初めて会った時に何て言ったか覚えてますか? “この子たちはまったく光るところがない”って言ったんですよ」って。でも本当、そうだったんです。何の変哲もないなと思って。しかも、何かにものすごくおびえてて、小鹿みたいだった。℃-uteやBerryzは自己アピールが強くて、ぐいぐい来るんだけど、アップアップはどんどん引いていく感じだったんです。何だろうって思って、「笑いなさい、大きな声を出してハイって返事をしなさい、とにかく前に来なさい」って。7人で何をしゃべってもいいから、とにかくフリーに楽しく自由に心を開ける場所を作りたいと思いました。もちろん(ハロプロをクビになったという)コンプレックスを抱えていることは知っていたけれど、そこを払拭するのが最初の仕事だと思っていましたから。だからすごい誉めて、「すごいかわいい、すごくいい声だ、すごいレベル高いよ。足りないのは自信だけだからね」って話して、ちょっとずつ力を引っ張り出していきました。初めてのオリジナル曲《Going my ↑》ができたころの話です。[次回7/6(月)更新予定]

■杉浦良美さんのホームページ
http://www.sugiura-method.com/