『マスクァレロ/チック・コリア』

文・中山康樹

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マスクァレロ/チック・コリア

マスクァレロ/チック・コリア

チック・コリアがすごかった時代のピアノ・ソロ・ライヴ
Masqualero / Chick Corea (Cool Jazz)

 マイルス・デイヴィス関連ミュージシャンやグループの新着音源をご紹介する臨時設置コーナー、今回はチック・コリアの登場です。このコーナー初ではないでしょうか、あるいはリターン・トゥ・フォーエヴァーがあったかもしれません。ともあれ今回はチック、そしてピアノ・ソロのライヴという注目作です。

 チック・コリアといえば、60年代と70年代が最高だった、その後は抜け殻のようなものであると思っているわけですが、これに異を唱える人は、チックの愛好者でも擁護者でも正当な聴き手でもなく、ただたんにチックというミュージシャンを過小評価しているだけだと思います。ちがうでしょうか。

 チック・コリアは60年代から70年代にかけての約20年間こそがベストであり、そこからあとは技術だけでやっている人なのです。もしそうでないとするなら、その人は60年代と70年代のチックの才能と凄みを理解していない、あるいは異常に過小に評価しているだけでしょう。

 思わず言葉がすぎましたが、約20年間のなかでも最大のクライマックスは、1971年と72年の2年間かもしれません。71年4月にECMにピアノ・ソロのアルバム2枚をレコーディングし、まあこのあたりが新生チック・コリアの出発点だったのでしょう。次いで72年に入ると、6月から7月にかけて、マイルスの『オン・ザ・コーナー』のセッションに参加する一方、テナー・サックスの巨匠スタン・ゲッツの新グループにも参加、いわば変型リターン・トゥ・フォーエヴァー的展開をみせる。これが圧倒的にすばらしい。

 そして同年10月8日に、リターン・トゥ・フォーエヴァーの2作目『ライト・アズ・ア・フェザー』を吹き込み(ある意味ではデビュー・アルバムの「かもめ」より高度かつよくできている)、11月にはゲイリー・バートンとの『クリスタル・サイレンス』に突入という、なんとも驚異的な進化。チック・コリアとは、このようなミュージシャン「だった」のです。

 今回ご紹介するピアノ・ソロ・ライヴは、『ライト・アズ・ア・フェザー』の3週間後のライヴ、したがって内容は文句なく、おまけに音質も最上のクオリティ、これはもうECMのピアノ・ソロ・アルバムに準ずるものといってもいいでしょう。注目すべきは、マイルス時代の4曲目でしょうか。

 最後に事前宣伝で恐縮ですが、明日(7月20日)、新刊『ローリング・ストーンズを聴け!』(集英社インターナショナル)が刊行されます。その記念として、HMVさんのインタヴュー取材にお応えしました。下記がその前篇になります。お時間のある方はご一読ください。それではまた来週。

「ローリング・ストーンズを聴け!」 中山康樹さんに訊く


【収録曲一覧】
1 Noon Song
2 Song For Sally
3 Jonathan Livingsten Seagull
4 Masqualero
5 Children's Song No.1
6 Sometime Ago (incomplete)
(1 cd)


Chick Corea (p)

1972/10/29 (Germany)

(更新 2012/7/19 )


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プロフィール

中山康樹

 「スイングジャーナル」元編集長。『マイルス・デイビス自叙伝』やコレクターズアイテムも含めた全作品を解説した『マイルスを聴け!!』等で聴きだしたらとまらない「マイルス地獄」へ誘っている。




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