写真はイメージです(Getty Images)
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、代理出産について。

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 今年8月、自民党のプロジェクトチームが代理出産を限定的に容認する案をまとめた。今後、改正法案に反映されて通ってしまえば事実上、代理出産の合法化への道筋をつけてしまうものになる。緊急避妊ピルのOTC(一般用医薬品)化もできない国で、女性が他の人のために子どもを産む行為に関しては、すたすたと法整備をしていくのかーっ!と、永田町に向かって叫びたい。カルトとの縁は切れていないのだろうか。

 代理出産? 何が問題なの?という人もいるかもしれない。SNSでは、「子どもを産めない苦しみを想像してください」と代理出産を不妊治療の一部のように考えている人や、「たとえ他人の受精卵であっても、自分の意思で妊娠・出産するのは、女性自身の選択です」と女性の自己決定を肯定しようとする人もいる。世界で最も有名なアメリカ人のフェミニスト、ジュディス・バトラーという哲学者の先生も「代理出産と売春は女性が生計を立てる一つの方法。他人のすることを気にすべきではない」ということをインタビューで言い切っていたが(「クーリエ・ジャポン」電子書籍パッケージ版2022年9・10月号)、代理出産も尊重すべき女性の選択肢、というリアルが今ここにあるのだ。特に、中絶の権利が危うくなってきているアメリカでは、リベラルなフェミニストほど、代理出産を批判できなくなっているといわれている。中絶する権利=女性の自己決定であれば、自分の意思で妊娠・出産するのも自己決定・自己責任……ということなのだろう。

 でも……そんなふうに割り切れるものだろうか。だいたい中絶と違い、代理出産は莫大な金と人が関わるビジネスでもある。代理出産ビジネスを禁止し、無償の代理出産のみを認めている国は少なくないが、いったん合法化してしまえば、あっという間に産業として発展していってしまう現実もある。たとえばイギリスでは無償の代理出産だけが認められているが、必要経費が支払われることから実質的に女性たちにとっては仕事になっているという。また、経済苦に苛まれるギリシャでは、外国からの「お客」用に仲介業ビジネスが発展し、代理出産がインバウンド産業の一つになってしまった。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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代理出産する女性の副作用や人間関係のトラブルは深刻